第220話 秦を滅ぼした二人の女……(5)

 また、そんな可愛らしい無邪気? な様子を覇王妃さまへと見せれば、彼女自身も、少しは本気で胡亥姫さまの相手をしてやろうと情が湧いてくるのだ。


 まあ、良い方向の情なのか、悪い方向の情なのかは、判断し難いところではあるのだが。


 覇王妃さまは、「フフフ」と苦笑を漏らしながら。胡亥姫さまの鋭い偃月刀での舞を、『ヒョイ!』、『ヒョイ!』、『ホイ!』と、覇王妃さま自身も紙一重のところで、何とか除け、避けながら。


「儂は別に、胡亥の事を侮り。蔑んだ覚えはないぞ」と。


 胡亥姫さまへと告げれば。


「うそをおっしゃい! 覇王!」と。


 胡亥姫さまは、他人の目──。


 ここは天下の往来。道の真ん中だから。普通に人が、他人が通行──行き通わせているから。


「……ん?」


「何かの撮影?」


「ドッキリカメラ?」とか。


「大変に美しい二人だけれど。新人の女優さん、アイドルなのかな?」と、声を漏らしながら歩く通行人達、だけではないのだ。


 余りにも御二人……。


 覇王妃さまへと胡亥姫さまが一般人離れ……。普通のJK の少女ぽくない、麗しく、妖艶な容姿の上に、中華、香港のシネマのヒロイン達みたいな、素晴らしい剣舞、武術、格闘を魅せ、披露をするものだから。通行人達が立ち止まり。二人の格闘シーンを、己の両手、掌を叩きながら。


「素晴らしい」


「凄い」


「素敵だ」


「何て煌びやかな女性達なのだ」


「死ぬ前に、こんな素晴らしい物……。紫色したスケスケパンティーまで、冥土の土産に見せて貰えるとは思わなんだ」と、己の両手を合わせ拝む御老体を筆頭に。あちらこちら、二人のずば抜けた技量を褒め称える。絶賛の声がするから。


「ど、どうしよう?」と。


 気落ちをした声を漏らす籍なのだよ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る