第197話 覇王妃さまのお迎え?(8)

「お~い! 胡亥」、


「胡亥、頼むから。離れてくれ。離れてくれよ」、


「お願いだから。胡亥」と。


 麗しい彼女、姫さまに対して不届き千万! 他人、他所の男、オス達が凝視すれば、羨望な眼差して見る。見詰めるほど羨ましい限り。様子でいる籍なのだが。彼は、籍は、別に胡亥姫さまのことが嫌い。嫌で、このような振る舞いをする訳ではない。なにのだよ。


 実際、学園内の教室では、籍の膝の上に胡亥姫さまが、彼女、妻、妃のような振る舞いで座る。座り甘えることも多々あるのだから。籍自身が胡亥姫さまのことを毛嫌いしている訳ではない。


 またないと、胡亥姫さま自身も知っている。わかっているから。己、二人の前を溜息、落胆、気落ちしながら歩く。歩行をしている健司少年のことなど、気にもしない。かけない状態で仲慎ましく、愛おしい彼との帰り。帰宅の最中のデートを堪能、満喫をしながら。


「フフフ」と、笑み。微笑を漏らしながら歩く。歩くのだが。


 何故、籍は? 籍は、そんな上機嫌の胡亥姫さまに対して太々しい顔、怪訝な表情で嫌がりを見せ歩く。歩行を続けているのかと言えば。申せばね。


 この時間、お時間はね。籍の彼女……。



 そう、幼少期から彼に尽くし、奉公を続けてきた。某大学のアイドルさまでもある。拍殿も帰る。帰宅をする時間なのだ。


 だから籍は、己の妃さまの嫉妬が怖い。怖い、というか? 言い訳。説明をするのが面倒。面倒だから。


「胡亥、頼む。頼むから。俺から離れてくれ」と、泣き言染みた声色で、胡亥姫さまへと嘆願をするのだが。


 彼女は、「いや~。いやです~。籍~。妾は~。籍から、離れません。離れませんから~」と。


 彼、籍の思いとは裏腹な台詞や行動、おこないをして、戯れてくる。くるから。


 籍は、いつも如く、『困ってしまって、ワンワン』な状態へと陥っている。そんな最中に、健司少年の絶叫、問いかけ。


「せ、籍~! あれを! あれを見てみろ──!」と。


 彼が指さす方向、先を見詰める。見詰めるとね。


『わりゃ、あああっ!』、


『うりゃ、あああっ!』ではないが。





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