第44話 御対面?(6)

 だって拍殿自身も、今の渾身の一蹴りで、物の怪さまが体ごと吹っ飛んでたじろぎ、『くそ~。この淫乱痴女が~!』と、捨て台詞を吐きながらじりじりと後退を始めると予測をしていたのだ。


 でも物の怪さまは、拍の奇襲からの攻撃を己の頬で受け止めて──耐え忍んでみせた……だけでない。


 先程も告げた通りで、拍の持つ、スラリと伸びたカモシカのような足の先にある『ギュ』と細くなったくるぶし辺りを両手で握り、放りなげたので。「きゃぁ、あああ~」と、絶叫をあげながら驚愕──。



 その後は?


〈ドーン!〉


〈ガン!〉と。


 拍自身の身体から鈍い音……。




〈ドーン!〉



 ……ん? あれ? 拍の裸体からでた鈍い音は、『ドーン!』だけで収まったようだね。



 う~ん、一体何?



 ま、こんなことを脳裏で思いながら壁に激突──。その場に倒れ込んでいるはずの拍へと視線を変えてみる。



 あっ? あれ? 可笑しい……。




 と、いうよりも? 何故、拍殿の側に籍が……。




 それも彼は、自身の口から。


「いた、たたた……」


 と声を漏らしているのだ。


 と、いうか?



 う~ん、どうやら籍が、物の怪さまに吹き飛ばされた拍──。


 そう、自身の大事な物を籍が、自身の身を引き換えに、渾身に受け止め庇ったみたいだね。

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