第36話 女同士の対面……(25)

「籍~、籍~、愛している~。お主は儂の物だ~。誰にも渡さぬ~」と。


 艶と甘い声色で籍へと、愛おしく囁きながら耳を甘噛み……だけではすましてくれる筈もなく。


「「うぐっ、ぐぐ、ぐっ、はぁ~、はぁ~」」と。


 濃厚、官能的な大人の接吻と言う奴までして、籍を堪能するのだよ。


 その女性……ではなかったね。その物の怪の女性だったね。



 まあ、その物の怪の女性なのだが。自身の妖力? 魔力? まあ、どちらなのかまではわからないが?



 自身の目の前にいる籍を金縛り状態で釘付け──。


 身動き、言葉すら真面にでない籍の両頬を自身の持つしなやかな掌と指先を艶っぽく使用しながら添え──。



 籍の顔を自身の舌や唇を優艶に使用して、彼のことをおもちゃにして貪り味わい堪能しているのだ。


 そんな最中の二人……。




 そう、自身の大事な男と、それを奪う新たな女性(敵)……。




 その女性(敵)が、パソコンの画面から身体半分しか出ていない者……。




 そう、この世の者ではない物……。幽霊、妖怪、地霊、精霊であろうとも拍殿は。その謎の女性(もの)に対して恐れ、畏怖することはないのだ。


 特に、先程まで、下の階……。リビングで自身の姉である梁殿と。己の男。籍のことで揉めてイライラ気を高ぶらしている彼女だから。いくら相手が物の怪の類の女性であろうとも畏怖し、恐れ慄くことはない。


 ましてや? 彼女……。



 拍殿の締まった裸体を見ればある程度予想もつくとは思うのだが。


 彼女は空手の有段者なのだよ。


 だから尚更、『古から物の怪を倒すのは格闘家の務め!』だと威勢よく思っているから、自分の男を貪る物の怪に対して畏怖することはなく。


 先程ののような怒号を拍殿は吐くこと可能なのだ。


 でッ、拍殿を迎え討つ立場になる物の怪の女性はというとね?


「き、きたなぁあああ~! この淫乱痴女めがぁあああ~! 儂の籍をいつも、いつも毎夜の如く優艶に誘い。貪りおって~。今日と言う、今日はー! 許さぬからな! この淫乱女がぁあああ~! 必ず成敗してやるー!」と。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る