第196話 僕は超珍しい漢【ウコンパンプ】(61)
それも? 爺さんの顔を、先程迄の怪訝な表情で凝視する訳ではなく。『フムフム』と、いった感じ、様子で、隣の爺さんの商品説明を素直に聞き、だけではなく。
「おじさん! 美味いな! これ!」
「うん、美味しい。美味しい」
「うまい! うまい! うまいぞ! これは!」
「ああ、この佃煮は、うまい! うまいな!」
「ええ、本当に美味しい。美味しいね……。おじさんが煮たの?」
「おじさんが作ったの?」
「おじさんがこしらえたの?」と。
まあ、今度は、こんな絶賛の声をあげる。あげるのだ。爺さんの周り。売り場に集いしお客様達は……だけではない。ないのだよ。これまた。と、いうか? 家の販売ブース、売り場と隣の爺さんとの間にある店内へと向かう。退出できる通路を行き交うお客様達や家の店の前や隣の爺さんの店先を歩くお客様達も。
「……ん? 何?」
「何だ? 何があった?」
「何か良い物。商品でもあるのか?」
「う~ん、何か? 良い物……。食べて美味しい物があるようだね……」と、各自各々が声を漏らす。脳裏で思う。想いながら。隣の爺さんの販売ブース、売り場へと更に集い。群がるのだよ。
と、なれば? 家の怖い顔のおじさんの口からは、「はぁ~」と、溜息が漏れて。脳裏では、「(もうこれで、当分仕事にならん。ならん……)」と、嘆き始めるのだ。
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