第185話 僕は超珍しい漢【ウコンパンプ】(50)

 早く! 早く~! もう、早く~、買うてくれぇ~! 儂の佃煮を~! と、急かし。急かしまくりながら。


 お客様達が、「美味い!」、「美味いよ。おじさん!」と、言葉を吐く。放つ。漏らすのを身構え、ポーズ!


 そう、隣の爺さんは、格好良くポーズをきめるのだ。


 まあ、こんな感じでね。


 先ずは、己の販売台、屋台の天板に片手の二の腕を当てながら。自身の身体を低く構え。構えながら。


 隣の爺さん自身を取り囲む。取り囲むように凝視しているお客様達を隣の爺さんは、ぐるりと見渡す。見渡し確認。お客様達の目、顔色の変化を窺う。窺い観察をするのだ。


 彼等、彼女達の、少しの変かも見落とさないように。


「どうだ?」


「どうだろうか?」


「美味いだろう?」


「美味いなら、買うてくれぇ~」と。


 お客様達へと囁きながら様子を見る。窺うのだ。


 彼、隣の爺さんのもう一つの腕は、遊ばせている訳ではなく。


 隣の爺さんが、販売台としている屋台にぶら下げてある袋──。


 そう、スーパーマーケットやショッピングセンター等で買い物、ショッピングをした後に。購入した商品アイテムを入れる袋に手をかけながらポーズをする。するのだ。


 自身の周りに集うお客様達が『買う!』、『買うわ! おじさん!』と、いつでも声を漏らしても良いように構え、ポーズを続ける。いつもの隣の爺さんならばね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る