第93話 ふふふ、今度は私かな?(9)

 まあ、当たり前の如く。絵里ちゃんは、自身の母へと興味津々に訊ねる。


「……ん? 美味しいよ。絵里。この【クランベリー】は……」


 絵里ちゃんに問われたお姉様は、ウフ、ニコと、微笑を浮かべ、微笑みながら。興味津々に見詰めてくる絵里ちゃんへと言葉を返す。


「……ん? お嬢ちゃんも食べみるかい?」


 自身の母が私【クランベリー】を試食している様子を興味津々に見詰めていた絵里ちゃんへと。家のおじさんが、私【クランベリー】の試食を再度、食品トングで摘まみ、掴むと──。そのまま持ち上げ、興味津々に、自身の母を見詰めていた絵里ちゃんへと、怖笑みを浮かべながら、試食をどうぞと声をかけ差し出したのだ。


「えっ、うん……」と。


 絵里ちゃんは家のおじさんに、私【クランベリー】の試食を勧められはしたのだが。自身の母であるお姉様のようには。家のおじさんの試食を安易、軽々しく受け取ろうとはしないのだ。


 だから私【クランベリー】は、絵里ちゃんの様子を凝視しながら。


『どうしたの? 絵里ちゃん? 何故、私【クランベリー】の試食を、家のおじさんから受け取らないの? 家のおじさんは確かに、傍から他人が彼の顔を凝視すれば、大変に恐ろしい顔はしてはいるのだが。彼の容姿とは裏腹に、家のおじさんは大変に優しく、気さくな男性だから怖がらなくてもいいのに』と。


 私【クランベリー】は、絵里ちゃんへと告げ説明をしたくなる衝動へと駆られる。


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