第88話 ふふふ、今度は私かな?(4)

 家のおじさんに、マルーン色をした私【クランベリー】の試食を食品トングで手渡しされたお姉様は怪訝しい表情で、と、言う事はもうないようだ。


 先程【竹炭豆】の試食をご賞味してから彼女は、うちのおじさんへの、心の壁、ゲート。エ○テ○ーフ○ー○ド(笑)と、言う奴を取り除いたので、お姉様はガード甘くなり、というか。しなくなり始めている。


 ましてや絵里ちゃんのお母さんは、うちのおじさんに、私達を買わないか? の呼び込みや商品案内、試食案内の当初から、顔色を変えずにさらりと平常を装ったまま、創り言葉では無く、ごく自然に、絵里ちゃんのお母さんへと『お姉さん』、『お姉さん』と、何度も呟き、囁いているから。いくら家のおじさんが怖顔で容姿の方が余り良くないにしても。独身時代の若くういういしい頃の自分自身では無く、子供産み育てている自分自身を【女性】、【女】と、見てくれた上に、先程自分の容姿を褒め称えてくれたおじさんに対しては、絵里ちゃんのお母さんは好意的になっているので彼──。家のおじさんに対してお姉様は、私達、世に駄菓子・豆菓子・珍味・ドライフルーツと呼ばれる者達を強引に売りつけられる。買わされるのではないか? と思う、猜疑心──。


 だから早く、家のおじさんの販売ブースから逃げ立ち去りたいと思う気持ちが薄れてきているのだ。


 だってお姉様は余り容姿が良くなくても、異性であるおじさんに、もっと己の容姿を若く……。



 そう、今のお姉様の立場……『絵里ちゃんのお母さん』、『絵里ちゃんのママ』そして『おばさん』と呼ばれている今の彼女の現状では無く。



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