第39話 おじさんとJK(26)
「ほらほら、試食だけでもいいから、食べていって」と。
怖顔のおじさんは、僕【芋かりんとう】や、その他のお菓子、珍味にドライフルーツ達とは違って諦めモードになることはないのだ。
そう、またおじさんは、凝りもしないで、自身の生まれ持った怖顔での笑み……。キモ顔になることを彼は知っているのか、知らないのか、僕達もよくはわからないけれど。おじさんは懲りもしないで、キモ笑みを浮かべながら、食品トングで掴んでいる僕【芋かりんとう】を突き出し誘うのだよ。
幼い頃の絵里ちゃんと両親二人をね。更に。
「……娘さんにこれをあげてください。試食だけでいい~。気にしなくていいから」
と、声をかけながらだよ。
「ほらほら、あげて~、さぁ~」とも。優しい声色で、顔はキモいが、僕達の怖顔のおじさんは、幼い頃の絵里ちゃんと両親二人へと声をかける。
「ママ……」
両親二人の背に隠れ、僕達のおじさんのキモ笑みに怯えていた幼い頃の絵里ちゃんだけれど。おじさんの熱意……。
と、いうか?
このキモも笑みと、怖顔とは不釣り合いなぐらい本当は、心の優しい彼だから。その優しさが、幼い頃の絵里ちゃんへと伝わったようだから。絵里ちゃんは、両親二人の背で隠れ怯える行為をやめて前へと足を一歩踏み出しながら彼女のお母さんへと声をかける。
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