第447話 繋がりを断つ為に
──〝進化〟。
それは、この世界における
大抵の場合、身体能力の向上や内在魔力の量と質の増強と共に下位種の状態で得ていた特性が更に強化されるが、それとは別に全く新たな能力を獲得する事も稀にあるという。
それこそ、まさに
『どういう事? 進化とボクらに何の関係があんの?』
そこまで望子に関係のない事象となると途端に頭が回らなくなるフィンはともかくとしても、ハピはその現象と今ここでそれに触れる意味を朧げながらにでも理解しており。
『……私たち三人が上位種に進化する事が、魔王を討伐する事に──延いては望子を元の世界に帰す事に繋がるのね?』
『流石はハピ嬢、物分かりが良い様で何より』
たとえ命を散らしてでも進化を遂げなければ、コアノルの心臓部を護る結界を破壊出来ないのだろうと、逆に言えば自分たちの進化こそが正しく〝鍵〟なのだろうと半ば確信めいた推論を語るハピを、ローアが素直に称賛する一方。
『……そんで? その進化とやらをするのに何でボクらが死ななきゃいけないの? 生きたままだと駄目な理由があんの?』
己の理解力のなさが原因とはいえ、まるで除け者にされている様で不愉快だったのか、フィンからの露骨に苛立った早口での詰問に対し、ローアは『然り』と首を縦に振りつつ。
『結論から申せば、
『へ? 先代の? それって確か……』
『望子のお父さんよね? 彼と私たちに繋がりなんて……』
同じ召喚勇者でも、フィンたちから見て最愛の存在である望子ではなく、どういう訳か望子の父親である勇人と自分たちの間に何らかの繋がりがあり、それを断つ為に一旦その命を散らさなければならないと明かしたローアだったが。
フィンのみならず、ハピの頭上にも疑問符が浮かぶ。
当然と言えば当然だろう。
フィンたちから見た勇人とは望子の父親かつ先代の召喚勇者でもある事以上の知識も感慨も一切なく、そんな他人も同然の相手──フィンだけは彼を
そんな困惑に塗れる二人に、ローアは問いかける。
『そも、お主らの所有者とは?』
『みこだよ』
『望子ね』
まず、ぬいぐるみたちが誰のものなのかを問い。
言うまでもなく、二人の答えは一致する。
『次に、お主らの創造主とは?』
『それもみこでしょ』
『そうね……で? 何なの、この質問は』
続いて、ぬいぐるみたちを作ったのは誰かを問い。
やはり、二人の答えは一致したが。
ただでさえ時間がないのに要領を得難い言い回しの質問をぶつけてくるんじゃない、と流石のハピも苛立ち始めた時。
『では、お主らを
『……だから、みこだって──』
その言い方から察するに、おそらくはこれこそが本命なのだろうという事までは分かれど、つい先程までの問いと何が違うのかと言わんばかりの投げやりな答えを返したフィンだったが、ここで珍しく何かに思い当たって己の発言を遮り。
『──待って、まさか……』
「漸くであるか」
『じゃあ、本当に……?』
よもや、と彼女が勘づいた頃には既にハピも辿り着いていた様で、その時間差に呆れながらもやっと本題に触れる。
「ミコ嬢が成しているのは、あくまで
現状、ぬいぐるみたち三人の所有者自体が望子である事に間違いはなくとも、では
「一時的にといえど、かの恐るべき魔王様をも千年近く封じ込めた先代の召喚勇者、ユウトであると我輩は結論付けた」
『『……ッ!?』』
十中八九、勇人の差し金である筈だと言い放った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます