第444話 戻ってきた元魔族
『……何やってんの? みこの傍に居る筈じゃ……』
そう呟くフィンの瞳は、ウルの死という最悪の事態を差し引いても、元の紺碧より随分と濁っている様に見える。
当然と言えば当然だろう、ローアには〝望子の護衛及び魔王の体内の案内〟という、ともすれば〝外〟での戦闘以上に重要であるとも言える任務に就いている筈なのだから。
「少々予定が狂ったのでな。 さて……」
しかし、そんなフィンからの睥睨にも一切怯む事なく己の計画に綻びが生じたがゆえの乱入だと正直に告げた後。
ちらり、とフィンから視線を外す。
その先に居たのは、悲壮に暮れたまま浮遊するハピと。
(
彼女が抱えた、ウルの痛々しい亡骸。
「
『ちょ、うるさ……何言って──』
聴力に秀でたフィンの鼓膜を刺激する事も厭わぬ、ローアにしては珍しい大声で以て、フィンを始めとしたほぼ全員にとって何一つ要領を得ない内容の発言を叫び放ち。
何言ってんの、と最も近くに居たフィンが口を挟む前に。
「……あぁ、好きにしな。
「て、店主……?」
「うむ、では──」
負傷の影響か大声ではなかったものの、他の全員が疑問符を浮かべたローアの発言の全てを理解した上で彼女の問いかけを肯定、つまり誰かを戦場から魔王の体内へ転移させる事を認めた瞬間、ローアは俄かに
今まさに、カナタや望子の元へ転移せんとしたが──。
『待てローガン。 貴様が何を目論んでおるのかなど知りたくもないが、この場に現れたからには覚悟も出来ていような』
当然ながら、それを安易に許す様な魔王ではない。
この十数秒間、コアノルが手を出さなかったのはローアが反撃手段を備えている可能性を考慮していたからに過ぎず。
「我輩は既に魔族を辞めた身。 従う義理などないのである」
『……痴れ者が』
こうもナメられたとあっては、もう黙ってはいられない。
待機させていた無数の蝙蝠型の刃に命令を下し、ローア諸共フィンを殺して絶対的な優位を得ようとした、その瞬間。
「行くぞ、フィン嬢。 そして──
『はッ!? ちょ、行くってどこに……!』
『わ、私も!? 今それどころじゃ──』
一瞬早く
「……さて、もうひと頑張りしますかね」
無数の刃の襲撃を受ける事となる、残りの一行を置いて。
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