第427話 今だよ!!
一方その頃、地上では──。
「第一段階は上手くいってる! 実際に撃ち出す前に何度か試す様にお願いしてるから、その中で一番長く止められる瞬間を見計らって撃ち出す! いつでもいける様にしておいて!」
今なお降りかかり続けている魔王の攻撃をレプターやカナタが結界で防ぐ中、自身の神力とファタリアに従う精霊の力で視力が強化されていたキューが空を見上げて現状を確認。
時が満ち次第〝第二段階〟へ移行する為、準備を怠るなと言い渡した事により全員が決意に満ちた表情で首肯し。
「特にフィンとリエナ! 二人に懸かってるんだからね!」
『了解! ちゃんとボクに合わせてよリエナ!』
「偉そうに……ま、それでこそだけどね」
第一段階と、メインとなる望子たちの射出を除けば最重要事項となる〝魔王の肉体に一撃を見舞い、望子たちが通れる程の穴を穿つ〟役割を担う手筈の
……成功を確信している訳ではない。
何しろ相手は邪神の力を完全に御し、覚醒した魔族の王。
今や、かつての召喚勇者であり望子の父親であった勇人でさえ討伐はおろか封印すら危うい正真正銘の──〝怪物〟。
しかし、それでも二人は揺らがない。
己の実力を、そして何より望子を信じているから。
望子ならば必ず、この戦いを終わらせてくれる筈だと。
自分たちの役割は、その一助となって望子を導く事。
望子が戦いを終わらせてくれると信じ、ともすれば必ず訪れる未来とまで思い込んでいる二人としては──フィンは特に──緊張する必要が? という疑問さえ抱いていた様だ。
ゆえに二人は、ただただ静観する。
キューから号令が下される、その瞬間を待ち続けて。
そして遂に、〝その瞬間〟が訪れる──。
「──今だよ!!」
最後に発破をかけてから、およそ数十分もの時間を要しこそしたが、キューの号令には一切の迷いも躊躇いもなく、このタイミングなら絶対に成功すると確信しているのだという事を否が応でも感じさせるものの。
……そもそも何故、見極めが数十分にも及んだのか?
それは、コアノルが持つ〝異能への耐性、及び免疫力〟がキューの想定を遥かに上回る物であったからに他ならない。
ここで言う〝異能〟とは、ウェバリエの呪毒とポルネの声の事を指すのだが、『何度か試してほしい』というキューの頼みに従った二人による試行錯誤は、同時にコアノルへ耐性を与え免疫力をつけさせる事にも繋がってしまったらしく。
ただでさえウェバリエは糸と毒を、ポルネは喉を枯らす勢いで本番に向けて試し続けていたというのに、それを上回る勢いで通用しなくなっていくのだから手に負えないとはまさにこの事。
最早、ウェバリエの呪毒は最低限の効力しか発揮し得ないという事をキューとウェバリエは既に悟っていたらしいが。
……ポルネの〝声〟だけは、少し事情が異なる様で。
発音、音程、声量、抑揚──あらゆる要因によって〝止められる時間〟が目まぐるしく変化する関係上、コアノルの耐性や免疫力の獲得も追いついておらず、こちらに関してだけ言えば試行錯誤も確かな意味を持っていて。
フィン謹製の蜂蜜入り水玉で喉を潤し続けてもなお、コアノル=エルテンスという巨大な怪物を一瞬でも押し留める事による重圧で喉が裂け、尋常ではない程の痛みと吐血を伴っていたが、それでもポルネは決して諦める事なく声を出し続け。
ウェバリエの毒腺や紡績突起、エスプロシオの体力や揚力が限界へ達しかけていた時、それに気づいたのはキュー。
(今の、これまでより長く……ッ!!)
ポルネが発した言葉自体は何の変哲もない魔王の動きを阻害する為の物であったが、それまでの試行よりも明らかに長く、それこそ三秒近くも動きが鈍った挙句、ウェバリエの呪毒にも対処しきれず被弾したのである。
……あれを再現出来れば、きっと──。
そう確信したキューは即座にファタリアから精霊の力を借りてポルネに今の情報を伝達し、〝その時〟に至らせたのだ。
──〝止まれって言ってんでしょうがァ!!〟
……一見、ヤケクソとしか思えぬ様な叫びによって。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます