第421話 必要なのは──
元々世界最強格のリエナを除いた増援の面々において、邪神の力を宿したウェバリエが単純な戦力としてトップクラスに位置しているのは言うまでもない事だが。
それ以外の面々もまた、ウェバリエの様に進化こそ遂げてはおらずとも、リエナによる強化を度外視してもなお勇者一行に勝るとも劣らない力を得ている様で──。
(魔王の意識が釘付けになってる……ウェバリエには悪いけれど、これは好機だ。 今の私たちが力を合わせれば──)
コアノルの意識が〝かつての側近のそれと似た力〟を持つ
「ッしゃあ!! もっぱつブチ込んでやらァ!!」
「アタシもヤるぜェ! 身体も戻った事だしなァ!!」
「ちょ、ちょっと揺らさないでよ……!」
『グリャアァ……ッ!』
今この瞬間も魔王の弾幕をどうにかこうにか躱し続けているエスプロシオの頑張りにも構う事なく、オルコとカリマという血気盛んな二人に挟まれてあわあわとするポルネも居れば。
((とんでもないところに乗り合わせてしまった……!!))
唐突に急降下したり、かと思えば百八十度近くも旋回したお陰で天地が逆になったりと、ジェットコースターも顔負けな飛行をするエスプロシオを、より一層あたふたさせる騒ぎ方をする同乗者たちに今更ながら若干の後悔をするカナタやピアンも居たりして。
こう聞くと、強くなっている様には見えないだろうが。
こうしてギャアギャアと騒いでいる間にも、エスプロシオが対処しきれなかった弾幕の一部は彼に乗っている六人の奮闘によって大仰に、しかし確実に無力化されており。
少なくとも望子たちと別れる前の彼女たちでは既に消されていただろう事を思うと、やはりリエナの強化とは凄まじく、そんなリエナの強化で増幅した力を手足の如く扱えている彼女たちもまた強くなっている事自体は疑いようもない。
……が、しかし。
「……結局、全てを終わらせる為には魔王の体内に入り込んで〝心臓〟に相当する何かを破壊するしかない。 でも、さっきまでの姿でさえ隙なんて殆どなかったのに……ッ」
『これだけの戦力が揃っても、まだ届かないの……!?』
弾幕の回避も無力化も、そして魔王との戦いにおける長期的な生存も重要ではあるものの、それ自体が魔王討伐という最良の結果に直結する事は決してなく、やはり先述した〝心臓部の破壊〟を成し遂げない限り望む未来には辿り着けないのだと。
隣で聞いていたハピさえ巻き込んで歯噛みしていた時。
「キュー、あんたの頭脳で羅列してごらん。 〝魔王の心臓部を破壊する為に必要な
「……必要、なのは──」
高揚している訳でも恐怖している訳でもない、ただ独り極めて冷静に戦況を俯瞰していたリエナから、〝この戦いに終止符を打つ為に必要な欠片〟についてを問われたキューは。
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魔王の動きを一瞬でも止められる者。
今や真の意味で不壊となった魔王の肉体を穿てる者。
心臓部の破壊を担える者。
穿たれた小さな隙間へと担い手を送り込める者。
担い手の背中を更に押す為の追い風を吹かせられる者。
担い手と共に魔王の体内へ入り、担い手を導ける者。
不測の事態で担い手が傷ついた際に回復させる者。
そして担い手を送り込んだ後、担い手が心臓部を破壊するまでの間、魔王の猛攻を凌ぎ切る事が出来る者たち。
以上、八つの要素を満たせる
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「──……だと、思う」
「成る程ね」
「ファタリア、精霊を通して今の内容を全員に伝えな」
「そう来ると思って準備してあるよ」
「ふっ、流石だね」
「ッ、いいの……? 確証らしい確証は何も──」
互いに悠久とも呼べる刻を生きているからか──五百歳近くの差はあれど──以心伝心な様子でキューの言葉の全容を全員に伝達しようとするリエナとファタリアに、『確実ではないのに』とキューは慌てて制止せんとしたが。
「確証がないのはあちらさんも同じ、だったら先手を打つべきだと思わない? 時間が経てば経つ程、不利になるのはどちらかなんて言うまでもないんだからさ。 違うかい?
「……ッ! 分かった、お願い……!」
「あぁ、任されたよ」
コツン、とまだ火の着いていない葉巻で額を突きつつ諭してきたファタリアの言葉は正論も正論、反駁の余地もなかった為、拭い切れない不安を噛み殺し、キューは伝達を許可。
赤、青、緑、黄、四属性の精霊たちがファタリアの指示に従って漆黒の空を舞い、人材に必要な要素を伝え終えた後。
「一人たりとも不精なんざするんじゃないよ。 こっからの全てが、あのデカブツを斃す為の絶対条件なんだからね」
ファタリアが呟いた鼓舞が、行動開始の合図となった。
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