第418話 強さの理由
──〝
それは、リエナが誇る最強の付与術。
リエナ以外でこの術を知る者は、そう認識している。
一番弟子であるピアンでさえも。
……しかし、その実態は違う。
最強の付与術であるという点は間違いではない。
一時的にとはいえリエナの全力の五割程度の蒼炎を身に纏うだけでなく、『己が
だが今は、『最強か否か』を問題にしている訳ではない。
この付与術が、オリジナルか否かが問題なのだ。
……結論から言ってしまうと。
では、その〝とある存在〟とは──?
……最早、言うまでもないだろうが。
──妾の力を、模倣しおったのか……!!──
そう、かの恐るべき魔王である。
千年前、先代の召喚勇者たる舞園勇人を除いて唯一コアノルの特性、及び得手を看破したリエナは、それを仲間たちへ伝達するよりも先に、その力を己のものとする事を選択し。
数年の時を経て完成した付与術、
当時、コアノルも違和感だけは抱いていた。
どういう訳か、ある時から有象無象の一部が妙に強くなったらしく部下たちが苦戦、或いは返り討ちに遭っているという報告が世界各地の
だが結局のところ、その原因の解明には至れなかった。
召喚勇者の参戦で、それどころではなくなったから。
そして千年が経過した今になって、ついに判明したのだ。
あの時の部下たちの犠牲も、たった今コアノルが負った浅くない傷も全てはリエナが魔王の力を解析し模倣して、己のものとしたがゆえに起きた事なのだと解明出来てしまったのだ。
……しかし、しかしだ。
『……ふ、ふふ……ッ、ふははははは……!!』
「……?」
そうと分かれば、いくらでも手は打てる。
目には目を、歯には歯を──思い込みには思い込みを。
某法典の有名な一文など知る筈もないコアノルの脳裏を過ったその策は、奇しくも
『はッ、こんだけ戦力がありゃイケんだろ!!』
『ふんっ、ボク一人でもやれたけどね』
『いいから手伝え!
『はいはい、っと!』
人数に随分な差がついたからか、それとも元々の楽観的な性格ゆえか、挑発的な笑みを浮かべたウルと、それに呼応したフィンの二人は魔大陸到着時に城門を破壊すべく放った、あの合わせ技を発動する。
『『
かたや全てを灼き潰す業炎、かたや全てを押し潰す激流を重ね合わせた巨龍が漆黒の闇を喰らい尽くしながら天まで昇ったかと思えば、その勢いを殺さぬまま巨大な牙で噛み砕くべく真下に位置する漆黒の城を目掛けて落下していき。
何故か魔王は巨龍の接近に反応せず、噛み砕くどころか丸呑みにしてしまえるのではと一同が期待したのも束の間。
『──……あ?』
『え……』
防御、回避、迎撃──何一つ明確な対処もせずに、ただ呆けている様にしか見えなかった魔王に赤と青の牙が触れた瞬間、爆ぜるでも消し飛ぶでもなく、パシュッという小さな破裂音を立てて巨龍が一瞬で消滅し。
『……あぁ……そうじゃ、そうじゃとも。 やはり、こうでなければならぬ……魔王とは、世界の支配者とは、常に──』
(……裏目に出たか? こりゃあ、ちとマズいかもね)
ウルとフィンのみならず一行の全員が困惑を露わにする中にあり、ぶつぶつと思考を低い声にして漏らす魔王の呟きを聞き逃していなかったリエナだけが地の底より湧き上がる様な危機感を抱く中、魔王城が再びその形状を変化させていき。
魔大陸そのものに宿った闇の魔力全てを吸収──もとい己の元へと戻した事で巨城を浮遊させる程の力を得た上に。
コアノル=エルテンスの上半身はそのままに、無数の触手を模らせた闇の魔力が集まって出来た下半身を生やしたその名状し難き程に禍々しく邪悪な姿は、まるで──。
『──遍くを見下す、絶対的な存在でなければならぬ』
望子と魔王が二柱ずつ取り込んだ、邪なる神の様だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます