第417話 追加の増援

 突如として乱入した四人と一匹に加え、リエナによって戦線復帰を果たした四人を合わせ、この戦いに限るとはいえ十三人と一匹と元のメンバーより多くなった望子たち。


 まだこの場に居ない仲間も居るには居るし、リエナたちがやって来た事を思えば他にも望子たちに力を貸してくれそうな者も居るかもしれないし、かつての召喚勇者である望子の父親は更に多くの仲間を〝軍〟として率いていたのだから、もっと増えてもおかしくはなく。


(まだ何者かの敵意を感じるが──……そこか!!)


 実際、魔大陸全土の気配を感じ取っていたコアノルには己の全てを構成する巨城の麓に立つ望子たち以外にも己への敵意と、そして小さな勇者への希望に満ちた何某かの存在が視えており。


「ほ、本当にいいんですか……!? こんなやり方……!」

「大丈夫、あたしも手伝うからさ」

「思いっ切りやってくれ! じゃなきゃブチ抜けねぇぞ!」


 その気配の主が居ると思われる方向、エスプロシオに乗っていた三人が居たのと殆ど同じ高さでは、おそらく〝精霊〟か何かの力で浮遊していると思われる者たちが何やら揉めているらしかったが。


「わ、分かりました! 〝重量化メイクヘビィ〟!」

「さぁ、張り切って行っといで」

「よっしゃあ!! いくぜ魔王ぉおおおおッ!!」

『ッ、今度は何じゃ──』


 速攻で解決したのも束の間、二人が何かの魔術を残った一人に付与した途端、自由落下ではありえない速度と質量で以て隕石が如く飛来してくる何某かを視認したのは魔王だけでなく。


「あ、アイツら、の……!!」


 未だ浮遊したままの小さな小さな存在と、この瞬間も超高速で落ち続けている二メートルはあろうかという大きな存在が、かつて一行も訪れた事のある港町にて、それぞれ冒険者ギルドと海運ギルドの長を務める亜人族デミたちだと一行が気づいた時には。


「〝鬼人オーガ飛蹴ドロップ〟ッッッ!!」

『う、ぐぉ……ッ!?』


 着地の事など微塵も考えていないと言わんばかりに勢いを一切殺さず、必殺技の名を叫びながら落ちてきた存在を魔王は咄嗟に叩き落とそうと巨腕を振るったが、その時には既に腕と肩に相当する部位を貫き、コアノルにダメージを与え。


「ようせいさん!? おにさんも! きてくれたの……!?」

「久方ぶりだねぇ、ちっこい勇者様」

「相変わらず細っこいな! ちゃんとメシ食ってるか!?」


 漆黒の大地を陥没させる勢いで着地する一方、浮遊していた二人もまた精霊の導きでふわりと舞い降り、そんな三人の元へ駆け寄っていった望子に対して、かたや小さな身体で望子の肩に羽を下ろし、かたや大きな手で望子の背を叩く二人の名は。


 妖人フェアリーのファタリア=ニーフ、鬼人オーガのオルコ=タグワール。


 リエナにこそ及ばずとも、かなりの長寿である二人は魔族との戦いはともかく幾つもの〝戦場〟を経験している為、恐怖や怯えといった負の感情は全く以て見られない。


 そして追加の増援は、この二人だけではなく。


「ミコさん! 私も! 私も居ますよ!」

「え──うさぎさん!?」

「はい! 店主と一緒に転移して──」


 図らずもオルコの陰に隠れてしまっていたせいで、ぴょんぴょんと跳ねて存在をアピールしていた有角兎人アルミラージのピアンもその一人であったらしく、ぎゅっと望子と握手を交わしながらやって来た経緯を簡単に語っていたが。


 ……そんな事は、どうでもいい。


 少なくともコアノルにとっては。


(何故……! 何故こうも強い……!? 火光かぎろいによって妾への認識を固められておる事が一因ではあるじゃろうが……ッ)


 勇者の加護を得た畜生めらが傷をつけてくるのは分かる。


 火光が認識を改めさせたせいで後から現れた雑魚──である筈の畜生めらまでもが傷をつけてくるのもまぁ分かる。


 だが、それらの放つ攻撃が傷をつけるだけでなく己への確かなダメージとなってしまっている事が腑に落ちない。


 望子やフィンの様な強者、聖女カナタの様な特効手段持ちであれば納得出来なくもないものの、そこらの亜人族デミに毛が生えた程度の実力しか持たず、この戦いに介入するに相応しい訳がない者たちまでもが何故──というコアノルの疑問は。


(……? 何じゃ今のは……彼奴ら全てが、さも──)


 後から現れた亜人族デミたちや鷲獅子グリフォンから、まるで身体の内側から外側にかけての全てが〝別の何か〟に、もっと言えば〝視界に入れたくもない何か〟に見紛う程の膨大な蒼の魔力を感じ取った事で嫌でも答えに導かれ。


『……よもや……よもや貴様……ッ!!』

「……あぁ、やっと気づいたのかい」


 絞り出す様な低い声音での魔王からの追及に──。











『妾の力を、模倣しおったのか……!!』


 リエナはただ、魔族も斯くやという妖しい笑みで返した。

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