第413話 崩せる/崩される
振り下ろされたその巨掌は、最早〝不朽〟ではないが。
吹けば飛ぶ様な、とはいかないのもまた事実。
望子たちの認識次第で壊す事が可能になったかもしれないとはいえ、そもそもの威力や質量は変化していないのだから。
……しかし、しかしだ。
もし仮に、この巨掌が
勇者一行には、それを一撃の元に相殺した者も居れば。
その者よりも遥か高みに位置する強さを持つ者も居る。
だとすれば、この巨掌への対処は──。
『あたしに任せろ!! 〝
かつて隕石を相殺した者、ウルでも可能な筈である。
誰よりも早くその発想に至ったウルは、かつてと同じ様に彼女自身が切り札だと信じてやまない巨大な暴君龍の頭骨や牙を模った業炎を顕現させ。
『ルウゥゥゥゥ……ッ、ルオォォアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』
ともすれば魔大陸の近海にまで轟きかねない程の熱波を伴う大咆哮と共に、この場に望子が居る事さえ失念していそうな勢いで落ちて来る巨掌に噛みつき。
『ぐ、おォォ……ッ!!』
己の両腕を顎に見立て、それと連動しているらしい頭骨を閉じる形で巨掌を破砕してやろうと渾身の力を込める中。
(望子の前で
ウルはただ、愛しい少女に良いところ見せる為に。
そして、もう二度と〝巨大な落下物〟絡みでの無様な醜態を愛しい少女の前で晒さない為だけに頑張っている事が明らかとなったのだが──……まぁ、それはそれとして。
『ぶ……ッ壊れろォオオオオッ!!!』
『……ッ!? 馬鹿な……ッ!!』
鍔迫り合いの末、ウルの顎は見事に巨掌を破砕した。
しかしながら、それは一方的にではなく
『うわ本当だ! これまで絶対に壊せなかったのに……!』
『流石に、あの時とは段違いだねぇ』
ウルの業炎、或いは熱波によって溶け出した城壁の欠片を
『ッしゃ──う、おあァ!?』
そんな事より当のウルは顎と巨掌が破砕、或いは破壊された際の衝撃によって、ともすれば戦場どころか大陸の外へと追い出されかねない勢いで吹き飛ばされてしまっており。
「ウル! 掴まって!!」
『ッ、すまねぇ……!』
あわや場外となるところだったが、キューが咄嗟に伸ばした根っこを爪で掴んだ事でどうにかこうにか助かっていた。
『やったね、おおかみさん! たおせるよ、まおう!』
『あァそうだな! 一緒に崩すぞ、あのデカブツ!』
『うんっ!』
そしてウルを称賛するべく駆け寄ってきた望子が、今やウルよりも高い目線から褒めちぎってきた事で、いよいよテンションが爆上がりとなってきたウルが更に戦意を昂らせる中。
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(この城が、崩されるのか……? あの
対する魔王は、ある種の絶望感を抱いていた。
それは、魔王たる己が勇者に敗北するかもしれないという最悪の結末においてではなく、あくまでもウルの手によって一部とはいえ魔王城が、延いては魔王そのものが破砕された事による絶望感であり。
(そんな……ッ、そんな馬鹿な事があってたまるものか!!)
散々見下していた筈の、あの
こうなれば何としても望子以外は殺戮したい。
そうでもなければ、この怒りは収まらぬと確信していた。
(最早、妾に手は残されておらん……! ここからは──)
しかし、そんなコアノルが心中に抱く昏く澱んだ憤怒の感情とは裏腹に、この姿を見せた時点で、そして対策された時点で万策尽きてしまっていた為、最早ここで打てる手は彼女が最も厭うやり方の内の一つに縋るしかない──。
『──貴様の望む〝殴り合い〟といこう!
『上等だ!! かかってこいやァ!!』
──そう、〝ゴリ押し〟である。
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