第411話 一肌脱ぎに来ただけさ
──〝
それは、この世界で活動する冒険者たちの最上位に位置する等級の事であり、かつて魔族と他種族とが大戦を勃発させていた時代ならばいざ知らず、今の時代に
……ただ一人の
しかし、その
だが、幸か不幸か彼女は衰えてなどいなかった。
むしろ、あの頃よりも強く老獪になっている。
その証拠に、彼女は〝不朽〟と魔王自ら謳っていた筈の漆黒なる巨城の一部を利用した攻撃を、その煌々たる蒼炎の一撃にて焼き尽くしてしまったのだ。
ウルもフィンも望子も、そんな事は出来なかったのに。
そして今、彼女オリジナルの転移魔術で望子と攻撃との間に割って入った
『おししょーさま……! ほ、ほんとにほんもの!? どうしてここにいるの!? たすけに、きてくれたの……!?』
「ちょ、ちょっと落ち着きなミコ。 あんた勇者だろう?」
『う、うん……でも……っ』
そんな
その手は大きく優しく美しく、すりすりと猫みたいに頬を擦り付けていた望子だったが、やはり何故リエナがここに居るのかという疑問を解消するには至らず。
『それは妾も聞きたいものじゃな〝
「随分な言われようだねぇ」
そして、その疑問を抱いていたのは望子だけでなく何であればコアノルの方がより強く疑念を、ともすれば強すぎる憎悪にも近い負の感情を向けていた様だが、それも無理はないだろう。
かつての勇者である勇人が消えた今、この世界で唯一コアノルが警戒しなければならかったのがリエナなのだから。
尤も、〝不朽の魔王城〟と一体化した今のコアノルならば千年前に随分と手を焼いたのであろう火光も圧倒してしまえるのでは、と思うかもしれないが。
……残念ながら、そうもいかない。
何しろリエナは先程、魔王が放った攻撃を──。
──……閑話休題。
「ま、あたしも本当は口だの手だのを出すつもりはなかったんだよ。 これは今の時代の勇者と魔王の戦いだ、あんたの言う通り老兵のあたしは弁えるべきだってのも重々承知してる」
それはそれとして、実のところリエナも己がコアノルの言う一線を退いた身、戦場に立つ資格のない老兵であるという事は充分に自覚しており、かつての勇者の仲間であっても今の勇者の仲間ではないのだから、この戦場に踏み入るべきではなかったという事もまた言われるまでもなく理解していた。
……理解は、していたのだが。
「けれど、少しばかり
『ッ、面倒な事に……!!』
『お、おいリエナ!! リエナなんだよな!?』
「ん? あぁウル、久しぶりだねぇ」
『久しぶりなのはそうだが、そうじゃなくてよ!!』
「?」
『今どうやって迎撃した!? 何でアンタの炎は魔王の攻撃を焼失させられんだ!? アタシらは無理なのに!!』
『そーだよ! ボクでも弾くので精一杯なのに!』
そう、どうしてリエナが迎撃に使用した蒼炎はリエナや望子たちに届く事なく燃え尽きてしまったのか──という疑問を抱かずにはいられなかったのだ。
フィンが叫んだ様に、ウルやフィンが放っていた決死の攻撃の数々は魔王への有効打に成り得なかったというのに。
「あぁ、そんな事かい。 それなら簡単だよ」
『ッ!
しかし、そんな二人の疑問など解消して久しいとでも言わんばかりに余裕たっぷりな笑みを浮かべるリエナとは対照的に、ここまでの戦いでは決して見せる事のなかった強い焦燥と、そして致命的な何かを口走る前に始末せねばという強い殺意を込めた鉄槌を再び振り下ろさんとしたが。
リエナは余裕を崩さぬまま──……こう口にした。
「不朽だと
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