第362話 奪い返せない理由
──……そもそも、そもそもだ。
望子の持つ
望子の抵抗を無謀だと一笑するのならば。
奪い返してしまえばいいのでは──?
と、そう思うかもしれない。
尤も、コアノルは
それでも望子の姿や力に多少なりとも感心を覚えた以上、自分の喉元や心臓に届き得ると判断したと言い換えても差し支えない筈。
故に、リスクを冒してでも望子の攻撃を躱すついでに
反撃の芽の一切を摘む事が出来るのに。
何故それを実行しないのかと問われると。
しないのではなく、
奪い返さないのではなく、
が、正しい答えとなる。
何故なら、あの小さな立方体は──。
────────────────────
──……と、その前に。
望子が放つ蒼炎と闇黒の弾幕を、さも舞踊の如く優雅に、そして流麗に躱してみせている魔王コアノルの思考を覗いてみよう──。
それは遡る事、千年以上も前。
世界の掌握を至上目的として掲げた他種族との戦争の傍ら、いくつもの
その中には、いわゆる決戦兵器とさえ呼べる暴虐的な力を持つ代物から、たとえ所有者が下級であったとしても上級近くにまで存在の格を昇華させる万能な代物まで多種多様。
その全ては当然、魔王が掌握──。
──……可能な筈だったのだが。
たった一つ、たった一つだけ創造主であるコアノルの手から離れた
(……
そう、それこそが
言うまでもなく当たり前の事ではあるが。
生物ではないのだから当然である。
しかし、その
まるで魔王に、延いては魔族という種そのものに自らを扱わせまいと抵抗する様に、この世界に存在する属性の内、闇しか纏う事の出来ない魔族の手に余る代物と成り果てた。
当時は、いまいち要領を得なかったが。
(ユウトが
今になってみれば、あらゆる無機物に己の魂を切り分ける事で付与し、それを己の武器や仲間とする異能──
その推測は──……正しかった。
実際、
文字通りの
しかし、その推測が正しいのならば。
召喚勇者である勇人の所有物となり、武器か或いは仲間となって、コアノルに勝利する為に必要な
……そういう
(……そして本来、
だがしかし、かつてのユウトの力は今の望子よりも更に強く、そもそも
そこに、かつての──否、今の世界でも最強の
だからこそ、その
(巡り巡ってミコの手に渡ったという訳じゃの)
千年もの時を経た後、勇人の実の娘であり勇人と同じ様に勇者の素質ありとして喚び出された少女、望子の元へ辿り着いたのだろうというのが、コアノルの出した結論だった。
そして望子の手に渡った後、数々の助力があったとはいえ
奪い返す事は勿論、指一本触れる事さえ出来ないでいる──というのが答えであった。
──……と。
まぁ、ここまで色々語ったものの。
(或いは……これらの憶測は全て的外れで、
もう一つの捨てきれない可能性として、コアノルさえその一挙手一投足全てに予測がつかない異端の存在──
ここで、コアノルは一旦思考を放棄した。
己の目前で必死に戦う幼き召喚勇者を。
(……さて、そろそろ相手してやるかの)
……
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