第347話 王命による蠱毒
「えぇ、その通りです。 そして、これで役者は揃いました。 流石に壮観ですね、三幹部」
「んな事ぁどうでもいいから早く言え! 俺らに何させるつもりだ!? てめぇはよぉ!?」
そしてイグノールが驚いたのも束の間、ラスガルドの看破が正しいかどうかを確認する前に、デクストラは何でもない様にそれを肯定しつつ心にも思っていない感想をこぼし。
いい加減、
──……その、数秒後。
「──
「仰せ、だぁ……!? まさか……!!」
普段から部下に対しても敬語を使う彼女の口から飛び出たのは、いかにも高圧的な口調での『三幹部同士で殺し合え』という命令。
つまり、あろう事か貴重な最大戦力とも言うべき三幹部に対して、『蠱毒』をせよと魔王直々に命じてきているのだと悟った瞬間。
「……王命、か。 ならば致し方あるまい」
「っ、クソ女王が……!!」
ほぼ同じタイミングで王命だと理解したラスガルドが承知したのを聞いて、イグノールは『面倒な事になりやがった』と舌を打つ。
……戦う事自体は決して吝かではない。
寧ろ願ってもない事である。
だが今の彼が戦いたいのは──魔王。
望子との約束もあるのだから。
「全てが終われば部屋から出ても構いませんよ。 イグノール、貴方が勝利したのなら新たに得た力でコアノル様に挑むのも自由です」
「うるせぇ!! さっさと失せろ!!」
「そうですか。 では、また後程」
だが、そんな約束などデクストラには知った事ではなく、『約束を果たせるかどうかは貴方次第です』と何とも興味なさげに吐き捨てた彼女に、イグノールは息吹でも放たんとする程の怒声で威圧したが、やはりデクストラの余裕を崩す事は叶わず、スッと一礼してから
「……おい、ラスガルド。 こんな事になっちまったが、ある意味こいつぁ良い機会だ。 俺ぁ千年前から、お前と戦ってみたかったんだよ。 まぁ
はあぁ──と深い深い溜息をこぼしながらも、どこか愉悦を隠しきれていないイグノールの口からは、いずれ
「……そう思うか?」
「あ? 何言って──」
やはり表情も声音も変わっていないが、どこか纏う覇気に影を差しつつ何かを問うてきたラスガルドの言葉に、されど要領を得ずイグノールが疑問符を頭に浮かべた瞬間──。
「っ!?」
──彼の視界から、ラスガルドが消えた。
……否、完全に消えた訳ではない。
一瞬でイグノールの視界の中心から、ほぼ真横となる右隣へと高速移動していたのだ。
そして彼は、かつて暴走したフィンと互角以上に競り合ってみせた際に行使した闇の上級魔術、
有象無象なら百体近く同時に葬れただろうが、イグノールは単なる下級魔族ではない。
「──ぐっ!? てっ、てめぇ……っ!!」
「流石だな、よもや膝すら付かんとは」
その破滅的な一撃に対し、イグノールが魔術なしの腕と羽による防御だけで受け切ってみせた事に、ラスガルドは素直に称賛する。
それから、どちらからともなく距離をとった後、ラスガルドは何でもない事の様に扱える者が限られる超高難易度の魔術、
『いいか、イグノールよ』と前置きし。
「
「……はっ、面白ぇじゃねぇか」
イグノールに守るべき約束がある様に。
こちらにも果たすべき役割と、それに連なる目的があるのだと、そしてそれらの事実に自らが
『ギ、ギィイ、ギュウ"ゥゥゥゥ……ッ!!』
「余計な奴も居やがるが──……まぁいい」
また一方では我慢の限界だとばかりに、イグノールの牽制を物ともしなくなってきていた
「せっかく三幹部が揃ったんだ! ここらで一つ! 誰が強ぇか命を懸けて決めようぜ!!」
「……願ってもない事だ」
『ギィア"ァアアアアアアアアッ!!』
今、最終決戦を控えた魔王城にて──。
──……
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