第274話 小さな魔道具の出自
結論から言ってしまうと──。
──望子は
あの龍が放ったものと、ほぼ同威力の
尤も、その
何しろ、『ぬいぐるみと
何故、今回は
「──……ぅ、うぅ……ひりひりするぅ……」
「だ、大丈夫ですか……?」
今は、どうやら思ったより火傷の衝撃が大きかったらしく涙目になっている望子を、フライアが痩せ細った手で撫でながらあやしているという状況にあった。
「まぁ火傷うんぬんはともかく中々の
「は、はは……どう、でしょうか……」
一方、望子の
肯定すれば
否定すれば
一見すると
「……にしても──」
「は、はい?」
「……?」
翻って、そんなヒューゴの葛藤など知る由もないイグノールは、どうやら何か気になる事があるらしく。
その声に真っ先に反応したヒューゴだけでなく、フライアの痩せ細った身体に抱きついていた望子までもが視線を向ける中、彼はスッと望子を指差して──。
「何で、お前の
「え……あおかったっけ……?」
つい先程の望子が放った
『完璧に近い』というのは色違いだったからだ。
「そっ、そういえば……ミコ様の
「……蒼炎だったわね。 まるで、あの時の──」
それを聞いていたヒューゴもフライアも、よくよく思い出してみれば望子の
「──
「かぎ、ろい……おししょーさま……」
かつての最強の冒険者であると同時に最強の
おししょーさま、げんきかなぁ──と感傷に浸っていたものの、そんな望子をよそに魔族たちは各々蒼炎と化した
「……確か、ミコ様は
「う〜ん……うん?」
ヒューゴは何気なく、ドルーカの街で望子がリエナから超級魔術である
「……まぞくの、おにいさん……なんで、そんなことしってるの……? わたし、はなしてないよね……?」
「え──あっ! い、いや、それは……!」
望子が覚えている限りでは、フライアは勿論ヒューゴにも
そんな中、イグノールが『あぁ?』と声を上げ。
「何言ってんだ、ミコ。 こいつが最初に名乗ってたじゃねぇか──『
「な……っ!?」
「え……?」
ヒューゴの苦悩など何処吹く風といった具合に、この青年魔族が所属する
「ずっと、って……おふろ、とかも……? や、やだ」
「ち、違います! 私は、その様な──」
それもその筈、『ずっと見ていた』という事はプライバシーも何もあったものではなく、もしや皆で入ったお風呂なんかも見られていたのかも──そう考えてしまったからこそ望子は引いており、そんな望子を見て少女の疑惑を悟った彼は何とか否定しようとする。
「……まぁ、ヒューゴが覗きをしたとかはともかく」
「ふっ、フライア!? 君まで何を──」
一方、真偽の程はともかくとして取り敢えず話を戻そうと判断したフライアが、その細い手で望子の髪を撫でつつ特にヒューゴを擁護する気はないのか視線を逸らしたところ、ヒューゴはより一層慌てていたが。
「……ミコ様。 先程の青い
「う、うん……なにか、しってるの……?」
そんな彼の焦燥など知った事かという様に、フライアは視線を自分の胸元にいる望子へと落とし、つい先程の
「そもそも、その
「かんせいまえ……? でも、おししょーさまは──」
大前提として、たった今この瞬間も望子の首元に下がっている小さな箱型の
フライアが嘘や冗談を言っているとまでは思わないものの、それ以上にリエナの言葉の方が信憑性が高いと思うのも無理はなく、『おししょーさまは、かんせいしたっていってたけど』と反論を試みようとする。
「それは
しかし、それについてはフライアも理解したうえで確かな根拠があると述べ、おそらくではあるがリエナ自身が未完成の状態しか見た事がなかったから、もしくは完成時に名が変わる事を知らなかったからではと推測しつつ、この
「かの魔王──コアノル=エルテンス様なのです」
「「え……!?」」
「……へぇ」
ここにいる三体の魔族が仕える、かの恐るべき魔王コアノル=エルテンスなのだと明かした瞬間、何も知らない望子だけでなく、その事実を知らされていなかったらしいヒューゴも目を剥く一方、イグノールだけは愉しげな笑みを湛え望子の首元に目をやっていた。
「ま、まおうが、これを……?」
その後、到底信じがたい──というより、いまいち理解が及んでいない望子が再確認するべく尋ねると。
「えぇ……ですので何故それをミコ様が持っていらっしゃるのか甚だ疑問なのですが……それを何処で?」
「もり……って、おおかみさんがいってたような」
「森? 狼さん──……あっ、あの
逆に、どうして魔王の所有物を望子が当たり前の様に持っているのかを知りたいフライアが質問に質問で返したところ、これは自分が拾ったのではなく一行の一人である
森──はともかく『おおかみさん』には一瞬ピンときていなかったが、すぐに望子の
「それよりよぉ、そいつの正式な名前は何てんだ?」
「は、はい。 その、
フライアやヒューゴとしては、それ以外にも幾つか聞きたい事はあったものの、どうやら痺れを切らしたらしいイグノールの低い声音が割って入った事で、フライアは怯えながらも答える為に一呼吸置いて──。
「
あろう事か完成する事で『運命』から『禁忌』へと名を変えてしまう、その
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