頼り

「なんだけど、つてないの?」


首を傾げてエトに問うミヤ。


「ないな、あっても頼りたくない」


ミヤの問いに即答してふんぞりかえるエト。


時刻は早朝。

エトは、食事台に備えられたささやかな椅子(背もたれなし)に腹筋全開でふんぞりかえっていた。


全身プルプルふるわせて、辛そうだ。


「どうするのよ?」

策なしかい!と内心突っ込みながら腕を組んで問いただすミヤ。


現在ミヤは、どっかから拾ってきた伊達メガネにヘアピンを前髪につけた受験生風の格好だ。


そしてエトも食事台に数冊の本を置き、勉強モードだ。

置いてあるのはバイト雑誌ばかりなのだが。


まるで怠け者の受験生が、しっかり者の友達に見張られる形で勉強を見てもらってるような、そんな状況だ。


実際は事あるごとに逃げ出そうとするエトをミヤが引き留め、バイトを選ばせているところだ。


隣に立つミヤにガミガミ言われながらイヤイヤアルバイト雑誌を見ていたエト。



だが、それも限界が来て、ついに開き直ってふんぞりかえってしまったというわけだ。


しばらく震えるだけだったエトだが、急に何かが降りてきたとばかりにピタリと動きを止める。

隣に立つミヤが、

「……何なのよ」

と重ねられるエトの奇行に若干ひいている。


するとエトは姿勢はそのままに、目を閉じて何かを考え始めた。

それを何がしたいのかわからないミヤはただただ黙って見つめている。



そして数分後、心を決めたとばかりに目を開いたエトは雑誌のうちの一冊に手を伸ばすと、バッと開き、一点を指差した。


「よし決めた」


「早っ‼︎」

何が起きたのか分からないミヤはただ驚いている。


「……コンビニ?」


やだ思ったより普通……

とミヤ。


「ここはお前の餌をいつも買いに行っていたコンビニで、店員さんとも顔見知り程度には話せる、何より話ができる人間がいる。これに限る‼︎」


「あんたすごいわ……」


引きすぎて言葉が出てこないミヤは、ただただ思ったことを口にした。


「そうと決まれば面接申し込みだ‼︎行くぞ野郎どもォ‼︎」

「……野郎あんただけよ」


こうして、


バイトの面接申し込みに近くのコンビニへ駆け込むエトとミヤ。


「いらっしゃいませー」

「「ねねねねず子ォォォォォォォォォォォォォォ!?」」


なんの違和感なく店員していたねず子に度肝を抜かれた二人なのだった。


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