面接

「……で、」

40代ぐらいのおばさんが机に肩肘ついて威圧感を出してくる。


でかい顔にでかいパーマ。でかい目でギョロリと睨む、化け物みたいなやつだ。


「ヒィ……」


おばさんの圧にミヤがたじろぐ。


が、引かない。


ミヤは面接前にエトに言われたことを思い出してグッと堪え、口を開く。


「ここで働かせてください‼︎」


ミヤは決めたのだ。


エトのために働くと。


さっき、ミヤの前に面接を受けて落ちたエトは、面接後、ミヤのもとに駆け寄りガタガタ震えながら初面接なミヤにアドバイスをしていた。


『いいか?これから会う人には、ただひたすら「ここで働かせてください」と言うこと、何を言われても脅されてもだ』


と。



ミヤはただそれだけを頭に置き、思考停止で座っている。


意識はもうすでにどこかへ行き、今にも悲鳴をあげて逃げ出したいくらいだ。


さっきのエトのように。



だが逃げない。


ねず子はなぜか受かって働いているのだ。

こんな化け物がいるのにケロッとして。


(ねず子にできて自分に出来ないわけがない)と、今のミヤを支えているのはその一点だけだ。


「働くといっても、お前に何ができる?お前をうちで働かせてうちに何のメリットがある?」


「…………っ」

(無理無理無理無理無理‼︎)


ドスの効いたこちらを威圧する声音にミヤの精神はすり減り続ける。


「言っとくがこっちは遊びじゃないんだ。お客様は神様。神様がくるんだ。お前ごときがうちで働いて、ヘマしてお客様に迷惑でもかけてみな?ただじゃおかないよ‼︎」


「…………」


『何がただのコンビニバイトだ?

こんな魔女がいるなんて聞いてないぞ!?』


さっきエトが言っていたことの意味が分かった。

ミヤも完全に喉が詰まり、声が出ない。


「……ぃ」


「なんだい?」


「ここで働かせてください」




だが、なんとか最後の勇気を振り絞り、声を上げる。

「それはさっき聞いた、だからうちがお前を雇うメリットを言えと言ってるんだ」


苛立ち、さらに圧を増す魔女の言葉。


「ここで働かせてください‼︎ここで働かせてください‼︎」

内心(魔女め‼︎魔女め‼︎)と繰り返しながら思考停止で声を張り続けるミヤ。


「わーかった‼︎分かったからもうお黙り‼︎ったくうるさい子だね、ほら、ハンコ押した。雇ってやるから、自分の価値は仕事で見せてみな‼︎」


先に折れた魔女が契約書を取り出し、ハンコを押してミヤに渡した。


「ここで働かせてください‼︎」


ありがとうございますのつもりだが、もうこれしか喋れないミヤ。

「もういいよ、仕事は明日からだ。鬱陶しいからいつまでも突っ立ってないでさっさと帰っとくれ」


シッシッ、と嫌そうに視線を逸らし手を払う魔女。


すると、何かに操られるかのように無言で立ち上がったミヤはカクカク歩いて部屋を出て行くのだった。



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