ミヤ

「あなたは野生だからわからないかもだけど、所詮私達はペット、飼い主がいないと生きていけないものなのよ」


眉を寄せて辛そうな表情で話すミヤ。

ねず子は珍しく真剣に話を聞いている。


「私の前の飼い主は、年老いた老人だったわ。最後まで付き合ってくれる相手を求めて私を買ったみたい。」


「ヘェ〜」


興味があるのかないのかわからない返事。



「私のうちには、ほかに金魚と、犬がいたわ」


遠い目をしたミヤは、ねず子の反応など気にした様子もなく、一人で語り続ける。



「まだ生まれて数ヶ月の子猫のわたしをよ?死ぬ寸前の老人が買うなよって話よね?」


プンプン怒るミヤ。



「案の定、特に何といった思い出もできぬまま、飼い主は死んだわ。」


ただ淡々と語るミヤ。

そこに何か感情があるわけでもないように見える。


「飼い主がいなくなって、金魚は3日で死んでたわ」


「犬は最初はうるさいくらいに吠えてたけど、いつのまにか静かになってた。」


少し俯き、息を吸い直す。


「犬が静かになったところで、私は外へ出た」



「私はたまたま野生に適していたみたいで、食べ物は基本何でもいけたわ」


そこで、ミヤの表情が曇る、


「でも、野生の厳しさはそれだけじゃないわよね、すぐに死にかけたわ」


歩きにくい道路。やたら鋭い草木、落ちている資材、

体は移動するだけで傷だらけになってしまった。


そこへ襲ったあの雨風。


「さすがにここまでかって時に拾ったのがエトってわけ」


野生の厳しさを思い知ったわね、と締めくくるミヤ。




「野生にはそれなりに知識と運がいるものよそうじゃないとあっという間に死んでしまうものなの」

「ヘェ〜想像できません」

ねず子が相槌を打つ。

そりゃ、今までその厳しい中が日常なものからしたらなんでもない話なのだろう。


「なら現物を見ればいいわ……」

そういうとミヤは、ある方向を指差す。

その方を見るねず子。

「あれが野生に適さず、なお運も尽きてあと3日もあれば餓死か、病死するヤツよ」


エトを指差すミヤと、ふんふん頷くねず子。


「ちぃぃん、ちぃぃん……」


道に落ちたう○こ(食事中の方すみません)を突きながら死んだ目をしたエトが二人の視線の先にあった。


お腹はぐーぐーなってるし、賞味期限切れの弁当は食事台においてはあるから食べようとはしているみたいだが、どうも昨日のトラウマが襲って口へ運べずにいるようだ。


そして、これ食うよりはマシ……だと自分にいい聞かせるかのように、ひたすらにう○こ(食事中の方すみません)をつつく。


「話はそれたけど、私の過去なんてロクなものじゃないわ」



生まれてすぐ死にかけの人間に飼われ、飼い主もすぐ死に、その後いきなり厳しい野生の世界へ放り出されたのだ。

明るいところが何もない。


自分

実際、


ミヤにとっては今回が二回目の野生生活だ。


前回と違うのは飼い主と歴戦の野生児が一緒だということ。


まえよりは悪くないかもしれない。



が、その飼い主があと数日で死にそうになっている。


なんとかしなければ。


ミヤの目に炎が輝いた。

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