失業
「失業した……」
「ね〜……」
ガサゴソ、
「やる気出した瞬間これとかないわ〜」
「ね〜……」
ガサゴソ、
「終わり」
BANをきっかけに、することなすこと全てうまく行かなくなり、あっという間にホームレスになってしまったエト。
「あいつは容赦なく食い散らかすし、物は散らかすし、壊すし、最悪だ」
「ね、私の服もビリビリにしたわよあの子……」
ガサゴソ、
「そういえば、ミヤ、服ってどっから出てきたん?」
エトは一人暮らしだ。
姉も妹もいない。
つまりミヤの着ていた女性用の服がうちにあるわけがないのだ。
「えっ?前にあんたのしてる通販?を見てて、それ真似てみた」
つまりは勝手に通販サイトで購入していたようだ。
「あ〜、急に貯金が減ったと思ったら、なるほどな」
それどころか、
物凄い額の請求が来て、職を失い貯金でやり過ごそうと思っていたエトにとどめを刺したのはこの請求書だった。
ガサゴソ、
「さっきから何やってんの?あれ」
「食糧調達らしいわよ?」
死んだ魚の目をしたエトとミヤは、一心不乱にゴミ漁りをしているねず子へ視線を向ける。
ちなみに今の全員の服装はお揃いのジャージだ。
エトが緑、ミヤが赤、ねず子が黄色だ。
「ありました‼︎」
ねず子は、ゴミ山から出てくると、手に持ったものを二人に見せびらかした。
「何それ」
「賞味期限切れのお弁当です‼︎」
「うわ〜……」
どう反応していいのか困る二人。
ねず子一人目をキラキラさせている。
「これはまだ昨日のやつだし、大丈夫なのか?」
賞味期限をみたエトが、隣のミヤに問いかける。
「いや私に聞かないでよ」
それに嫌そうな顔で答えるミヤ。
ちなみに昨日は、
ねず子がどこからか持ってきた肉と魚を食べたらひどい下痢に襲われた。
エトだけ。
もうあんな思いは嫌だと、
ホームレス生活2日目でもうトラウマができたエトなのだった。
「逆にお前たちよく平気だな」
ミヤとねず子も同じものを食べたのに、何ごともなかったかのようにしている。
「私は別に、食べれるものなら何でもいける口なので」
「わ……私も、それなりに慣れて……」
そこでミヤが昔を思い出すように遠い目をした。
「どうした?ミヤ」
「いや、なんだか昔を思い出して……」
「お前の過去暗そうだもんな」
「なんでですか?」
ねず子だけ理解していない模様。
「いいか?ねず子……」
エトが話そうとすると、スッとミヤが割り込んだ。
「いい、私が話す」
そう言うと、スッと息を吸い込み、話し始める。
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