第31話*時空神降臨

 直幸に連れられ、千歳は執務室と書かれた部屋の中で、大量の書類にサインをしていた。



「ああ、しんどっ!。早く民主化してこの地獄とおさらばしたい!」


「うーん。民主化はどんなに早くても来年かな」


「どうして!?」



 直幸の非常な言葉に千歳の表情は懇願する猫のような顔で返す。



「千歳さん。そんな顔をしても無意味だよ。この国の人間は民主主義を知らないんだ。まずはそこから教えないといけない。

 歴史を見ても、何故か哲学者のような人間の本は見当たらないから、社会主義も分からないかもしれない」


「じゃあ、一年間ずっと続くの?」


「その心配はないよ。今サインしているのが、絶対王政によってある。王様の権利を他人に譲渡できるようにする書類だから」


「わかった。そしてたら、これで賢者が国を治めれるようになるわけか」


「そんなところかな。とりあえずは、教育していかないといけない。それと貴族が全員いなくなったから、埋め合わせも行わないとね。

 経済を回さないといけない。政治と経済は自分を含めた大人達がするよ。教育は先生方と優秀な生徒さんたちでやってもらい。国防は武器商人と機長、そして忍者君が主導。娯楽は監督かな。そして医療は医者の林さん」


「おお、完璧じゃない。これにサインし終わったら。私は自由になるわけね」


「言っただろ。民主化は早くても来年から。それまでは国の代表は君だよ」


「代表って基本的に何するの?」


「本来なら、他の国の偉い人との会う時に国の決め事をするのが仕事だったが、そもそも、今この国。というか、前の国の時は周辺が敵国しかないから王の仕事は搾取と戦争くらいなものだったな」


「そう、なら何もしなくていいのよね?」


「残念ながら、君が先ほどサインしたこの書類によれば、国をよくするための目安箱を一年間設置し、国民の意見を聞くことになっている」


「嘘。そんな」


「契約書の内容をちゃんと読まないからこうなる。それに、明日この国の一番の宗教のお偉いさんが会いたいそうだよ」


「断ってよ」


「宗教の在り方も決めないといけないし。それに言っただろ。この国の人間は基本的には王様が言わないと受け入れない。国教を作るのか、自由信仰にするのか。結果は決まっていても王様が直接言わないと」


「なるほど」


「それと、この世界観は中東やヨーロッパに近い。つまりは宗教の力が非常に強いところだ。日本のように無信仰はほとんどいないと思った方がいい」


「どうすればいいの?」


「昔の日本と同様に今この国は鎖国と状況が近い。が、地球と違い宗教は2つしかない。大きなのがね。一つが母神教。もう一つが死神教。この国独自の宗教はなし。

 だから、日本のようにするためには、独自の緩い宗教を創るしかないのかもしれない」


「どうして、そうあいまいなの?」


「歴史に存在しないからだ。この世界で日本のような国民性を作り出す方法が」


「確かにそうよね」


「だが、新しい宗教を創らないことにはどうしようもない。何故なら、母神教は毎日大地に10回は祈りを捧げたり、感謝の日は食事は禁止。他にもいろんな縛りがある。もう一つの死神教も縛りが多い。」


「世界の宗教みたい」


「そう、それに両方とも怖い一文があるんだ」


「なに?」


「信じる神は一つだけ。ていう一文」


「多神教の世界でしょ?」


「確かにそうだが、それは所詮はそう書かれているだけ、実際に人間が人生で見ることができるのは1柱のみ。さらに怖いのが聖地が同じ」


「うわぁ」


「そう、当然。歴史書を見れば戦争が起きてる。宗教戦争だ。そして今、そこをめぐって大きな戦争になった。

 この国が侵略戦争をしていた本当の理由は聖地を自国に入れたかったからだ」


「じゃあ、この戦争って」


「ああ、宗教戦争。しかも、さらに話がややこしくなっている。宗教戦争中に内戦が起きてる」


「そんな土地に、新しい宗教を創って大丈夫なの?」


「大丈夫ではないが、一つだけ試す価値のある方法はある。君が神になるんだ、千歳さん」


「...神」


「創造神か時空神を名乗るのが一番だろうね。別世界から来たわけだし時空神が合いそうな気がするが、やってみるかい?」


「なにをすればいいの?」


「君のスキルが鍵になる」







 翌日。新しい王に謁見するため、死神教の枢機卿があいさつにやってきた。このレオルタ王国は死神教を国教としている国だ。因みに死神教の神様は死蘇神ディメルアであり、基本的には死蘇神ディメルアに遭えるのは地母神ローコミナに会ったことがない人間が、死ぬときに見ることが多いのだそう。


 つまりは、死神教の根本は神にあいたいなら常に信じ続けなさい。という考えらしい。



「お初にお目にかかります。ナオユキ王よ」



 現在千歳は王の椅子の裏で自分の出番を待っている。理由はいろいろ言われたが、大雑把に言えばこの国は女王にはなれない法律になっているのと、私が神だと思わせるための演出が大事なのだそうだ。



「わざわざ、お越しいただくとは、リンダー枢機卿。今日はどのようなお話をされに?」


「ええ、この国の内政が大きく変わったことはよく理解しております。ですので、今一度確認をさせていただきたく、今日この場に」


「確認?」


「ええ、今後とも、私共の神であるディメルア様を信仰する。死神教を国教に指定していただるとは思いますが、念のために確認を」


「ふむ、その事なのだがな。この国の国教は新しいものにすることになったのだ」


「そんな、まさか母神教を国教にされるおつもりですか!?」


「いや、時空教を国教とすることになった」


「時空教?。それは...」


「何でも実る木はご存じか?」


「ええ、王がお創りになったとか」


「実は、余ではないのだ。神がお創りになった」


「神...と申されますと」


「お主たち死神教を崇拝する者たちの多くは死蘇神ディメルア様を見たことはないのだろう?」


「ええ、私もその一人です。いつの日か神に会うため、信仰を続けてまいりました」


「その神がこの地に降臨なさり、我々に神の木をお譲りくださったのだ」


「その神とは、まさか」


「そう時空神..クロヴァリス様だ」



 直幸がそういうのを合図に千歳が亜空魔を使って木の生成をコントロールし、天井から降臨する。その際に忍者に花吹雪を散らさせ、千歳の乗る木には、黄金の果実を実らせ出現する。



「私が時空神クロヴァリスである。この地を整定するため舞い降りてきた」



 その光景を見た、枢機卿は口をあほみたいに開かせたまま、しばらく黙りこんでいた。

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