第30話*神とは

 この世界には、本当に神と言う存在がおり、誰しもが一度はその存在を見ることが出来るそうだ。神を見るタイミングは人それぞれで、必ず何歳になれば会えるというわけではないそうだ。


 だが、ほとんどの場合は二十歳を迎える前に見ることが出来るそうだが、中には死ぬ寸前まで会うことが出来ないものも存在する。



 この世界には四柱の神が存在する。創造神アルファミリア。地母神ローコミナ。死蘇神ディメルア。時空神クロヴァリス。これらの神は『神の書』と呼ばれるアーティファクトに記録されているため、四柱いると分かっているが、この世界の人間が会ったことがあるのは、地母神ローコミナと死蘇神ディメルアの二柱だけでだそう。



 そして、見た者の話では、地母神ローコミナは女性の姿を、死蘇神ディメルアは老齢な男性の姿をしているそうだ。


 ここで、やはり千歳としては疑問が出てくる。それは千歳はこの世界の神に会っていないのではないかと言う疑問である。


 千歳があったのは、姿の変わる神様であり、決して一つの姿しかもっていない存在ではなかった。そして、この世界に来る召喚された者は皆、地母神ローコミナから言葉を受け、この世界に足を踏み入れるそうだが、今回の召喚においては、数人がイレギュラーなのか、この地母神ローコミナにあっていない。


 そして、この地母神ローコミナにあっていない者には、別に共通点があり、それが千歳が会った謎の神にあっているということであり、その全員がこの世界にない職業を与えられている点である。


 因みに、このことは千歳の定めた幹部。まぁ曰、これからの統治にあたり助力を願う人たちには共有している情報である。


 つまりは、ダンジョンマスター、今泉千歳。武器商人、マルコ・ストロガノフ。監督、福田雄司。医師、林鴎鵺。忍者、服部段蔵。この5名は全員が謎の神とのみ出会い。この世界に来ている。もしかすると、謎の神の正体は創造神アルファミリア、もしくは、時空神クロヴァリスなのかもしれないが。



 そもそも、何故神がわざわざ姿を見せるのかも、理由は定かではない。信仰心が消えないようになのか、人が傲慢にならないようになのか、それとも他に何か理由があるのか。


 神にあったとしても、質問ができるわけではなく。ただ言葉を聞くことが出来るだけだそうだ。千歳のように会話など出来ないらしい。



「以上が大雑把な説明になるかな。これ以上詳しいことは、その時にくれば話すか、後での方がいい」



 賢者、直幸の会話はそこで終わり、千歳は質問をした。



「どうして?」


「そろそろ、政治を始める時間だ」


「もう?」



 千歳は直幸の言葉に嫌な顔で答える。



「むしろ、このレベルのことは寝ずに考える問題だと思うが、千歳さん。君は革命を起こしたんだ。法律からなにから作り直さないと」


「それって、私必要?」


「この国は今誰の所有物なのかな?」


「なら、代理権あげるから」


「残念ながら、この国の人間は代理権というものを知らない。だから、君自身が書類にサインし、民に公布しなければルールが出来上がらない」


「うぅ」



 千歳はテンションを下げながら、書庫を出る直幸の後ろを追う。そして、歩きながら最後に質問をした。



「この世界ってちゃんと球体だよね」


「今それを機長に調べてもらっているよ。ついでに大陸の写真も撮ってもらってる。戦争において地図はもっとも大事な武器だからね」


「仕事が早いっていうか、もしかして寝てない?」


「徹夜なしで、この量の書物は書けないよ。パチン」



 直幸が指を鳴らすと、大量の書類が空中に出現する。



「何枚あるの?」


「ざっと、200かな」


「これ全部」


「もちろん、読んでもらうよ。それにまだ一部だよ」


「オゥ。ミス千歳。頑張ッテクダサイ」



 マルコが逃げるように千歳に声を掛けると、直幸が笑顔で語り掛ける。



「当然、マルコさんにも、書いてもらうものがたくさんありますよ」


「NooooOOOOO!」






 レオルタ王国から遥遠くを海上を飛行している機長こと、柳拓斗は会話をしていた。



「いやぁ、まさか。飛行機がしゃべるとは」


「私自身。変な感覚何ですよ。突然魂が宿るというのは」


「だが、ありがたいよ。正直話し相手がいないと、新大陸探しなんてつまらないからね」



 柳拓斗は直幸の頼みで、大陸の地図作りの協力、そして、他に大陸はないのかを調べる任務に就いていた。



「なんだあれ!?」



 柳拓斗の目の前には、黒いカーテンのように揺らめく壁が立ちはだかる。







 レオルタ王国から北東の国境に位置する場所。そこは国境を山で囲まれているレオルタ王国において数か所しかない他国による侵略ルート上。



「兄上。ようやく終わりましたね」


「ああ、ようやく、反逆国家の愚兵共を殲滅出来た」


「ゴルマの話では、父上がとられたそうです」


「そうか、毒を持って毒を制しようとして、その毒に殺されるとはなんと哀れな父であるか」


「これだけの大侵攻が失敗すれば、しばらくはおとなしくなるでしょうし、兄上」


「ああ、子供の頃のようにダンジョン攻略を始めよう」



 その男は、不敵に笑いながら振り返る。その場所には遥地平線の彼方まで続く屍の山が築かれていた。





「いやぁ、助かったよ。ところで君は何者なんだ?」



 王都ベルンからの脱出に成功したハイラス・キルマ・ジョセインは、この場所まで誰にも気づかれることなく、連れてきてくれた少年に質問をした。



「僕はテロリストだよ」


「テロリスト、、、君の名かい?」


「職業さ」




 《第二章・レオルタ内戦 に続く》

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