第29話*魔と神話

 そして、次に千歳が聞いたのは、この世界の生物達のことであった。

 

 この異世界でまだ、三日しか過ごしていない千歳であるが、この世界特有の生き物を一度だけモニター越しに見ていた。


 それはドラゴン。あれを見てから千歳は、この世界の生き物の生態が非常に気になっていた。そして、直幸が千歳に話したこの世界の生き物説明は次の通りであった。



 この世界の生き物。当然人間も含め体内に魔力を持っている。稀に魔力を持たないで生まれる生き物もいるらしいが。


 そして、魔力を持っているためかどうかは、この世界の化学が元いた世界よりもはるかに発展していないため、わからないそうだが、この世界にはおとぎ話に出てくるような見た目の生き物が数多く存在する。


 分かりやすいもので言えば、ドラゴン、ユニコーン、フェニックスなどが確認されているそうだ。因みにそれらの生き物の事をこの世界では魔獣マストと呼称し、稀にいる魔力のない生き物を無獣イストと呼ぶそうだ。


 この世界にも家畜は存在するが、その家畜にも魔力が備わっているため、元いた世界よりも飼育には危険が伴うそうだ。他にも見た目はただの馬であるが、馬にも魔力があり、この世界では魔馬マースと言われ身に宿る魔力が多いほど濃い色を持ち、魔力が薄いほど白くなるそうだ。


 また、千歳が気になるきっかけを作ったあのドラゴンであるが、正確には亜竜と呼ばれるワイバーンという生物で、ドラゴンに見た目は似ているが、違う生き物だそうだ。元の世界で言えば、カラスとワシくらいの違いだそう。


 基本的にこの世界の人間が従えられるのがワイバーンで、ドラゴンを従えた人間は数えるほどしかおらず、現在においては、三人しか確認されておらず、ソング国にいる竜騎士卿と呼ばれる人物。ガーシャ帝国にいる竜の勇者。そして、ミネルヴァ王国の青龍の巫女と呼ばれる人物だけだそう。


 因みに職業的には、竜魔道騎士である機長もドラゴンを従える素質はあるそうだが、必ずできるとは言えないそうだ。




 生き物について、ここまではまだ、元いた世界の常識で想像のできる生態を持っているそうだが、この世界には人間と魔獣マースともう一つの得意な存在がある。それが魔物マクトと呼ばれる生き物と呼んでいいのかわからない謎の生物がいるそうだ。


 これらには、ゴブリン、オーク、トロールなどの名が付けられ、姿形は当然名前によって異なるが、しかし、これらすべての魔物マクトと呼ばれる生き物たちはすべてダンジョンマスターによって生み出される魔法生物であるということだ。そして、この魔物マクトは決してダンジョン外でその存在を維持することができないのだそう。


 このダンジョンとは突如、何の前触れもなく出現し、森や山、洞窟を魔の領域に変え、放っておけば突如急激に領域が拡大するそうで、現在では討伐され消失されたそうだが、ガーシャ帝国にその後があり、その当時の記録では、1つの都市と50の村が消失したそうで、討伐されてから三年がたった今でもそこは草一つ生えない死の大地となっているそうだ。


 そして、ダンジョンマスター。千歳と同じ職業名の存在。そもそもダンジョンマスターは職業などではなく、魔物を生み出す魔物。ノスクリレイタと言われる存在の別名だそうだ。

 このノスクリレイタは、ダンジョンの最奥に眠る宝であり命を守るためにダンジョンが生み出す魔物と考えられている。その見た目はダンジョンの傾向に沿ったものとなるらしく、ゴブリン種のダンジョンであれば、ゴブリン種の見た目を。オーク種のダンジョンであれば、オーク種の見た目をしているそうだ。


 だがたまに、複数種の魔物マクトがそんざいするダンジョンの場合は、そのすべてが合体したような見た目のノスクリレイタが最奥にいるそうだ。


 そもそもダンジョンが生み出される原因は誰も解明できていないが、最奥までだれ一人たどり着いたことのない古代ダンジョンを持つ国。そもそも国の名前がないというか、ここの書物には国として認めていないため、地域の名称を『醜悪な大地』と呼んでいたそうだが、内容的にはどう考えても国が存在しているため、国と判断している。


 その古代ダンジョンを有する国にダンジョンが頻繁にできるため、古代ダンジョンこそがダンジョンマスターの元凶であると言われ、古代ダンジョンのノスクリレイタを討伐すれば、すべてのダンジョンが消滅すると考えられており、ダンジョンにのみ存在するアーティファクトが世界中に点在するようになると信じられている。



 以上が大まかに聞いたこの世界の生物についてだった。



 そして、次に聞かされたのが、この世界の神話に関する話であった。


 まず最初は国の説明の時に出てきた『禁忌の地』の事であるが、なぜ禁忌と呼ばれているのかというと、この世界の神話で、終末の時において、煉獄の業火が湧き出る場所とされているため、終末の時が訪れた時その地にいる物が真っ先に死ぬとされているからだそう。

 そして、何故わざわざ、ガーシャ帝国がこの『禁忌の地』を狙っているのかは、噂に過ぎないがソング王国の強さの秘密が『禁忌の地』にあるとされているためだ。


 次にダンジョンマスターである。何故千歳にダンジョンマスターという職業が備わったのかという謎である。これにおいては、歴史書を読んでも前例がないが、唯一近しいものとして、神話における魔王の話だそうで、この魔王とは千歳が勝手に名乗っているものとは違って、神がこの地で様々な生き物を作っているときに生まれた存在のことで、魔物マクトを作り出す存在だそうだ。


 この特性を聞けばダンジョンマスターと同じ存在のように思えるだろうが、違いが一つだけある。この魔王と言うのはダンジョンが必要なく、また生み出された魔物マクトはダンジョン外でもその存在を維持することが出来るのだそう。


 つまり、千歳がこの国をダンジョンにしようとしなければ、本当の魔王と同じ存在であった可能性が高く、神話の再来となっていたと直幸は考えているそうだ。



 因みに、この世界の神話に出てくる『天使エリナム』、『悪魔クルビス』、『魔王ヴァルモア』、『巨人ナザール』、『裂天ノペース』、『魔無ゼリック』、『創窟ジョエイン』、『病巣イルペト』、『黒吸ルラック』と呼ばれる九つの神話における終末の存在はいないのだそうだ。


 

 3番目に千歳が聞いたのは神の存在だ。

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