第28話*人族国家
千歳は王宮の大広間で戦場で死んだ者たちの蘇生を行っていた。
「死者蘇生」
千歳が言葉を発すると、光の粒子のようなものが集まり始め人の形を作り出す。そして、その光が収まるとそこには寝転んでいる人間が現れる。
「わぁお!。ほんとに復活した」
千歳はその状況に驚いていると、蘇生された人々が意識を取り戻し始める。
「ここは?」
「なにを?」
蘇生されたことが原因なのかはわからないが、頭が混乱している様子を見せている。
「お願い亜空魔」
【はい】
千歳は亜空魔を使い、蘇生された人々のメンタルケアを行う。
「どう。理解できた?」
「はい」
「おけ、それじゃあ、解散」
「えっ?。それだけ?」
「うん。これだけ」
千歳は頭の整理のついた人たちに対して冷たくあしらう。
「それとも、自分の死体が焼かれるの見にいく?。これから行くけど」
「え、いや。遠慮しておきます」
「なら、解散。今後の方針はあとで教えるね」
千歳はそう言うとどこかへ歩き始めた。
☆
千歳が廊下を歩いていると、背後から声を掛けられる。
「ハーイ。ミス千歳」
「はーい。武器商人」
「名前デ呼ンデクレナインデスカ?」
「たしか、名前何だっけ?」
「マルコ、デース」
「そう。マルコ。とりあえず死んだから、幹部候補止まりね」
「オゥ、酷イデスネ。機長ノ戦闘機ハ私ノデスヨ?」
「その戦闘機は今や、機長のお友達」
「確カニ、ソウデスネ」
「まぁ、でもすぐに次の内戦が始まるから、それで幹部ってことでいいんじゃない」
「オウ、モウ次ノ戦争デスカ?」
「すぐではないだろうけど、冒険者曰く、今回のは国王直属の軍隊で、本隊は国境で戦争中らしいわよ」
「ソレハ、帝国デスカ?」
「違うそうよ。帝国の属国とらしい。帝国は今、別の国と戦う準備中らしい」
「中々、activeナ、国デスネ。因ミニコレカラドチラニ?。死体ヲ見ニ?」
「嘘に決まってるでしょ。賢者さんに会いに行くのよ」
「ナルホド」
☆
千歳とマルコは、王宮の書庫の扉を開ける。
「あはよう。直幸さん」
「おはよう。千歳さんと、マルコさん」
「それで、この世界の事はどれくらいわかった?」
「とりあえず、昨日の夜に商人や冒険者達からの情報と、この国の書庫にある本の知識を全部入れたから、この国で一番の知識人ではあるだろうね」
「どうやって、この量を?」
千歳は書庫に大量に敷き詰められている本を見ながら聞いた。
「このスキルと言うのは便利でね。魔力を使えば本の中の知識をすべて手に入ってね」
「『叡智』ってやつのことね。それで、昨日集めてほしいっていったのを教えて」
「ん?。ああ、別に武器商人はいていいんじゃない。この先、軍事ごとを任せることになりそうだし」
「わかった」
賢者こと、鈴木直幸から千歳はこの世界の事について説明を受ける。
最初に国の説明を受けた。
まずは千歳の奪った国レオルタ王国、この国は大陸の中央付近に位置する内陸国となっており、領土の周辺はすべて帝国と、その属国に囲まれる形となっている。
そして、この国の国土の広さは人間の国ではそれほど大きくはないが、そうなったのは、およそ16年前、ガーシャ帝国が異世界から勇者と呼ばれる職業を持つ異世界人を召喚したことで、近くにあった大国。つまり、このレオルタ王国への進行を開始したことで、国土が小さくなったそうだ。
もともと、レオルタ王国事態、この世界で一番と言っていいほどの侵略国家で、他国を侵略しており防衛がそれほど得意ではなかったのも相まって、およそ16年たった今では、もともとの領土よりも少し少ない状況になっていたそうだ。
ただ、現在の領土になったのは、今からおよそ8年ほど前らしく、それからはこの国の王と3人の王子たち、そして『エレメント』と呼ばれる王国最強の戦士たちにより国土が守られなんとか今の状態を維持していたそうだ。
このエレメントと呼ばれるのは、オリジン、もしくはオリジナル。呼び名はそれぞれらしいが、亜空魔の言う専用スキルを持っている者たちで構成されており、今回の戦争では忍者が戦っていたのが、そのエレメントの一人だったらしい。
話を戻すが、このレオルタ王国以外に、知っておかなければならない国は4つあるそうで、
一つは先ほども名前の出てきたガーシャ帝国。数々の属国を従えている国で、本土はレオルタ王国の東側にある。およそ27人の勇者を保有する強国。そして、先輩転移者達の話では、現在はこの大陸の北部、禁忌の地への進行を企てているそうだ。
次にミネルヴァ王国。この国は海洋国家と言われ、大陸の東と、島を領土とする国で、海に住まう魔物を相手にしているためか、非常に強く、5年前に勇者を用いた侵略を帝国が開始するが、3か月後にミネルヴァ王国も勇者召喚に成功したらしく、その勇者の力で侵略を止めたそうだ。
因みに、住んでいる者のほとんどが、地球にいた海の生き物と人間を足して2で割ったような見た目をしているそうだ。
三つ目は、レオルタ王国から見て南西に位置する国で、長耳族や小人族といった、少し普通の人間とは違った特徴を持った人たちで構成された国で、国土は帝国に次ぐ大きさを誇る。この国は常時ダンジョンマスターとの戦いが繰り広げられているそうで、ダンジョンを滅ぼしては再び姿を現すダンジョンマスターとの死闘を繰り返している。
その恩恵もあるようで、ダンジョンで手に入る宝を諸外国に売ったりしている。アーティファクトの手に入る古代ダンジョンもこの国にあるそうだ。
因みに、誰も古代ダンジョンのダンジョンマスターを見たことはないらしい。
最後に四つ目が、レオルタ王国の北に位置し、この大陸で最強の国と言われる。ソング王国。歌う国と言われているそうで、兵隊が移動する際は必ず歌を歌い、戦う最中にも音楽が戦場に流れるそうだ。
当然帝国とも国境を接しているが、なんと侵攻初日に部隊を殲滅し、帝国の侵攻を止めたのだそうだ。
そして、なにより人族の国で唯一、北部の禁忌の地と接しており、何らかの交流があると噂されている。
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