第6話*悪魔と魔王

(敵を殺せばレベルが上がる。でも、どれだけ殺せばいいかは教えてくれなかった。

 もしかしたら、一つレベル上げるのに何万人も殺さないとしたら......私はこの世界の未来で悪名が轟くのかな?)



 千歳は恐らく、王女が住んでいたと思われる部屋のワンルーム分はあろう大きなベットに寝転がりながら考えていた。



(ダンジョンマスターになったせいで、人間が本来持つべき感情はなくなったのか、もともと感情が薄いのか)



 千歳は棚の上にある王女の物と思われる。家族写真を横目に自身の目に映る文字を見返していた。



【王都の民たちの先導し、貴族の屋敷を焼き払いました。それにより、34名の貴族と142名の平民が死亡しました】





 千歳は王女広い部屋を自室とした後、一人スキルを使用していた。



【スキル『領域支配』を使用し平民に貴族を襲うよう先導します。また、スキル『生殺与奪』を使用し感情が壊れないようケアしました】


(そう、ありがとう。スキルもう一度見せて)


【現在のマスターのスキルはこちらです】


 1.領域侵略

 2.領域支配

 3.植生創造

 4.生殺与奪

 5.%*&GDW


(五番はあなたの事よね。どうして文字化けしているの?)


【この世界に私の能力を表せる言葉はありません】


(そう、なら私が付けてあげる。そうね、悪魔っていうのが一番あなたには良いかもね)


【では、スキル『悪魔』はすでにこの世に存在していますので、表示上、今後私はスキル『亜空魔』となります】


(ねえ、漢字使ってるけど、この世界の文字は日本語なの?)


【漢字はこの世界の創造神であり最高神の趣味でスキルに使用されています。この世界の人間にとっては古語扱いです】


(そう。私、転移っていう状況のこと良く知らないんだけど、さっきこういう系の小説好きな子に聞いたら、ダンジョンマスターって魔物っていう化け物作れるって聞いたんだけど?)


【スキル『魔物創造』は、ルールを無視し王都を支配する際に消滅しました】


(消滅。ていうか、ルールを無視したって)


【本来でしたら、ダンジョンマスターはこのような人間の領域をダンジョンにはできませんが、スキル『亜空魔』の能力でスキルを生贄にして実行しました】


(生贄ってまさに悪魔ね。最後に試してなかった植生創造は?)


【食糧問題改善の際に既に使用しましたが、王都の至る所に『欲望の木』を生成してあります】


(欲望の木?)


【その木が生えた土地の感情で成長し、その感情を満たす物が実る木です】


(本当にいい名前を付けれた感じね)



 千歳は笑いながらスキルに話しかける。すると、窓から赤い光が差し込んでいることに気付くこの世界は中世ヨーロッパ時代の科学力らしく油はあっても電気は開発できていない。そのため、夜は遠く離れた王城の一室まで光が届くことは通常であればない。


 千歳は窓の外を見ると、遠くからでもわかるほど大きな屋敷が連なる地区が燃えていた。恐らくスキル『亜空魔』の先導により平民たちが火を放ったのだろう。



「この光景を見ても、感情の起伏が全くないのはどうなのかな。......そうね。あなたがアクマなら、私は魔王てとこかしら?」






「ルドマン急げ、急いで王都から出るのだ」


「は、はい」


「捕まればお前も殺されるぞ。我々は支配を拒んだのだからな」



 簡易的なスピード重視の馬車が王都の大通りを猛スピードで進む。



「くそ、どうしてこうなったのだ。我々は一体何をこの世界に招いてしまったのだ。手に入れた召喚術式が間違っていたのか?。他の国と何が違ったのだ」



 そして、馬車は闇夜をさっそうと駆け抜けてゆくが、馬の足が止まる。



「ハイラス様。門の前に人だかりが」


「なに?」



 そこには武器を構える平民たちがいた。



「くそ。門番だけであれば金さえ積めば出れると思ったが」


「どうしましょう?」


「後ろからは冒険者の奴らが迫ってる。完全に手詰まりだよ」


「手助けしましょうか?」



 諦めかけたその時、いつの間にかハイラスの横に座っているまだ成人しているかどうかといった見た目の少年が話しかけた。

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