第7話*混乱の人員確認

 千歳は翌朝王宮内の人数を確認していた。



【現在王宮内には258人の転移者がいます】



「結局。王宮にいるのは258人か。ってあれ?。数が合わないような。ねえ、王都にいる転移者ッて何人?」



【270人です】



「はぁ!?。あのCAさんに当時飛行機に乗っていた人数聞いて」


【確認中...】



 千歳は昨日帰属化した元CAさんに人数を確認する。



【当日の搭乗者は機長などを含めて全部で308名だそうです】


(ああ、頭の中が混乱してきた。整理しよ。転移者は全部で270人。そのうち王宮内に258人。王宮内にいない転移者ッて帰属化してる人?)


【いえ、敵です】


(つまりは、王宮内にいるのは全員が帰属化してる人?)


【いえ、3名の敵が侵入しています】


(えっ!?。やばいじゃん)


【強制転移機能を使いますか?】


(どうしよう?。あっそうだ。その敵は私を殺せるの?)


【不可能です】


(良かった)



 千歳はとりあえず一安心する。だが敵が侵入している現状に変わりはない。



(私たち以外にも転移者がいるってことでいいのよね?)


【はい】


(同じタイミングで転移した人かどうかって分けれる?)


【はい。現在同じタイミングで転移してきた人物で王都で確認できるのは255名です。全員王宮内にいます】


(つまり、合計15人の全く関係ない転移者がいるってことね。で、そのうち私を殺せるのは200人以上いたわよね?)


【いえ現在では15名となっています】


(減りすぎじゃない?)


【帰属化したためマスターを殺せなくなっている者が203名おります】


(また数があってないし、分けわかんなくなるよ。昨日と今日の違いを分かりやすくして)


【現在マスターの思考にのっとった集計中です...】



 あまりにいろいろな数字が出てきたため千歳の脳内は完全にパンクしていた。



【昨日から今日にかけて新しく王都に入った人間はいません。また転移者ではない人物でマスターを殺せる人物は昨日は13人でしたが、このうち4名が帰属化し、5名が王都を出たため現在残りの敵は4名です。

 マスターより先に転移してきたものは昨日から変化せずに15名王都に未だ敵として滞在しています。この15名全員がマスターを殺すことが可能です。

 マスターと共に転移してきたのは昨日258名で現在は3人減った255名となっています。このうちマスターを殺せたのは206名いましたが203名は帰属化したためマスターを殺せなくなっています。残りの3名はすでに王都にはいません】



(ちょっとは理解できるようになった)



 千歳は『亜空魔』が表示している文字を何度か読み返しながら頭の中で整合性を取っていく。



「つまり、現地人で危険なのは4人。転移者で危険なのは15人。そして、帰属化せずに消えた私を殺せる飛行機の乗客が3人か。今はとりあえずこの19人が問題なのと、侵入者の3人ね。侵入者がどこにいるかわかる?」


【王城の南東の壁伝いにいます】


(そう。その三人を拘束できそうな人はいる?)








「昨日から突然この王都がおかしくなった原因が必ずあるはずだ」


「分かってる。昨日突然脳内に響いた声はまさしく悪魔の囁きだ。あれでほとんどの住民が可笑しくなった」


「ああ、あんな美味しい話が実際にあるわけがないのにな。貴族を殺したら、今より生活が良くなるなんて信じられるか」



 王城の壁に張り付いて王宮の内部の様子を探ろうとしているこの3人は、昨日脳内に響いた声の謎がこの王城にあると考え侵入していた。王都出身の冒険者たちである。


 そんな三人は城に着いてからの違和感に気付く。



「さっきから一人の兵士も見ないな」


「ああ、というか、門番もいなかったしな。いったいどうなってるんだ」


「まさか悪魔にくわれてたりしてな」


「悪魔ではないでござるよ」


「まあ、そうだよな」


「確かにな。魔物はわかるが悪魔って神話のおとぎ話だろ」


「おい、今知らない奴の声聞こえなかったか?」



 三人は互いに顔を合わせ、周囲を見るが誰もいない。



「上でござるよ」



 三人は同時に上を見上げると、顔を布で隠した黒づくめの男が壁に足をつけて見下ろしていた。



「忍法。眠たくなあれの術」



 三人は意識を失った。 

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