第16話:妊娠…アフリカの光 その2
振動はますます激しくなり、それと同時にぬかるみもひどくなってきた。地面から水が溢れ出しているんだわ!私は何度も案内人さんを見る。周りには水蒸気が立ち込め、振動が起こるたびにウグイスの甲高い鳴き声が響く。
目的地はもうすぐよ!と私は案内人さんに言った。早くたどり着きたいけどたどり着きたくない気持ちもあった。ぬかるみは溢れる水のせいで小さな泉となり、その中を私と彼を乗せたジープは激しい振動を起こしながらエンジンをフル回転させて進んでいく。タイヤが水を蹴る音が響いてくる。もう少しよ!もう少しよ!目的地までもう少しよ!
ジープが壊れてしまいそうな振動の中、案内人さんは汗まみれで必死に私を目的地まで誘導する。相変わらず下手クソな誘導だけど本気の愛を感じるよ!彼も目的地までたどり着けるのが嬉しいみたい!二人の目的地は一つだった。ウグイスの甲高い鳴き声はますます響き渡り、それが私を目的地まで導いていく。
いつのまにか泉から湧き水が溢れ出していた。弾けるような音を立てて水が溢れ出している。湧き水はキラキラと光っていて、それがなにか命の誕生を思わせるの。
湧き水をしばらく見つめていると突然頭の中にサバンナの風景が浮かんできた。私は毛だらけで全身真っ黒な案内人さんを見つめる。これがあなたの生まれた場所なの……?彼は汗まみれの毛だらけで全身真っ黒な体でニッコリと頷いた。そして振動とウグイスの声が最高潮に達した瞬間だった!私は目が眩むほどの強くて熱い光を感じたの。
ここは、アフリカなの……?
目的地にようやくたどり着いた私たちはサバンナの大地に寝そべりながらずっと見つめ合っていた。広大なサバンナ。ここは最初に人類が生まれた場所。ここがあなたの故郷なのね。私は大仕事を終えてすっかり満足している汗まみれの彼に微笑み、キスをしながらお礼を言った。
「ありがとう。私をここまで連れて来てくれて」
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