第11話:妊娠…天使
ひとしきり彼にシャワーを浴びせたとこで今度は体を洗おうと思ったんだけど私男の人の体なんか洗ったことないでしょ!その逆は何度も……ってバカ、余計なこと書くなよオマエ(*´∀`*)!……ましてやこんな毛だらけで全身真っ黒な男の人なんて見たことすらなかったのよ!
とりあえず私は彼を羽交い締めにしてからスポンジで彼の背中を擦ったんだけど、スポンジが彼の毛だらけになっちゃって、体を洗うどころじゃなくなっちゃったの。しかも彼がウキャー!と背中をさすって文句言ってくる。なに?毛が絡まって痛い?モデル顔でセクシーボディーでツルンツルンのお肌を持った私がせっかく洗ってやってんのに文句言うんじゃないわよ!自分じゃなにも出来ないくせに!
下のタイル一面に彼の黒くて太い毛が散らばってる。ああ!汚い!どうすんのよこれ!後でクリーニング屋さんに掃除して貰わなきゃ!しょうがないから次はボディブラシでやったんだけど一瞬でブラシがボロボロになって使えなくなっちゃった。タイル一面に散らばっている彼の太すぎる毛は洗うたんびに増えていくの。
もうしょうがないから今度は風呂場の掃除に使ってる毛の無茶苦茶硬いブラシで彼を洗うことにしたの。彼はブラシをみた途端毛を逆立ててウキー!と威嚇するんだけど、私は絶対洗ってやる!痛いだろうけど我慢すんのよ!これもあなたを清潔にするためなんだからと無理矢理背中をゴシゴシ擦りまくってやったの。
そしたら彼、ウキャキャ!ってはしゃぎ出したの。ブラシで擦られるたんびにフー!とか言ってなんかスッゴい気持ちよさそうなの。私が疲れてちょっと休んでたら、彼がその毛だらけで全身真っ黒な体でフー!フー!と私に早く擦れって言ってせがんできた。そんな彼が可愛くてちょっとしばらくほっといたら、彼ったらウキー!って怒って私から無理矢理奪って自分で擦りはじめたの。
彼はフーフーと上機嫌でブラシで背中を擦ってる。わかるよ。だって今まで体なんか洗ったことなかったんでしょ!象さんにウキー!シャワー浴びせろ!って言ってもずっと無視されてたんでしょ!凄い嬉しそうに体洗ってる!ホントに子供みたいに喜んで!こんなに純粋な男の人をはじめてみたわ!
そんな彼を見てるのが楽しくて、ついイタズラをしたくなっちゃたの。私はシャワーヘッドを彼に向けてシャワーの水圧を最大にしてから彼にシャワーを思い切り浴びせたの。彼はウキャー!と牙を剥き出してたから、怒ったかな?と思って私は謝ろうとしたんだけど、突然、彼が私の持ってるシャワーヘッドをもぎ取ってお返しと今度は私に向けてシャワーを浴びせてきたの。なにすんのよ!コイツって私も彼からシャワーヘッドをもぎ取って浴びせ返す。彼もまたもぎ取って浴びせ返す。彼どころか私まで子供に戻って遊んじゃう!あの無邪気で純粋だったあの頃に還っていく。二人はもう純粋に笑っていた。こんなに無邪気に笑ったのは久しぶりだよ!
あなたは天使なのかもしれない!毛だらけで全身真っ黒な天使なのかもしれない!失恋に傷ついた私を慰めるために神様があなたを遣わしてくれたんだわ!あなたが現れたおかげで失恋の傷なんて全部吹き飛んじゃったもん!なんか笑ってるのに涙が出てくるよ!
ふと彼の方を向くと彼と目が合った。彼ったらそのつぶらで透き通るような目で心配そうに私を見つめてるの。違うのよ!悲しく泣いてるんじゃないの!嬉し泣きなのよ!彼の瞳はホントに透き通るほど綺麗で、私の心まで、そうモデル顔でセクシーボディーでツルンツルンのお肌をした私の傷ついた心までその瞳で覗いているような気がしたの。ねえ、あなたの目にはどんな私が写っているの?モデル顔でセクシーボディーでツルンツルンのお肌を持った私を見てあなたはどう思っているの?
私達は見つめ合い、お互いに無言になってしまう。沈黙の中、タイルに転がったシャワーヘッドから出るお湯の音だけがバスルームに鳴り響いていた。
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