第5話:妊娠…衝撃の出会い! その3

 ウギャ―――――――――ッ!!!痛い!痛いよ!歯が手に刺さってる!手から血がどくどく溢れてるっ!どうしよう!どうしよう!!と、とにかくなんとか 手をなんとかしなきゃ!


 私は噛まれていない方の腕で、彼の毛だらけの首を掴みそして木から引きづり降ろした。そして彼を説得したの。


「ダメ!いい子だから、そんなおいたしちゃ!」


 だけど彼は聞かない。いつまでも口から手を放さない。


 しょうがないから、私力一杯彼を殴ったの。バキッ!ガス!ベキッ! って骨が折れるぐらいメッチャ殴ったの。そしたら彼はウキャ――ッ!と奇声を上げながら私から口を放すとすぐに逃げようとした。


 だから私は彼に言ったの。


「アナタは独りぼっちで寂しかったんだよね。だからあんなことをしたんだよね。わかってるから、私わかってるから……」


 でも彼は私を信用してくれない。目を剥き毛を逆立て歯を見せながら私を威嚇する。


 可哀想……どうしてそんなに人を信用できなくなったの?日本に出稼ぎに来たんだけどいぢめられて働くことが出来なかったんだわ。だって彼見た目がかなり変わっているし……。


 でも許せない!彼をここまで歪ませたこの国が許せない!こんな天使のような目をした彼をここまで追い詰めるなんて!


 


 私達がお互いに無言でその場に立っていると、自転車に乗ったお巡りさんがこっちに来たの。


「さっき、ここで女性の叫び声がしたって通報がきたのですが……ってあなたでしょ!その手はどうしたんですか? 血だらけで大変だ!今すぐ手当てをしなければ!」


 と、言いながらお巡りさんが私のほうに歩いてくると、歯をむき出して毛を逆立てながら威嚇している彼を見つけてこう言ったの。


「コイツですね。あなたを襲ったのは。多分動物園から逃げ出したんでしょう。すぐに捕まえますね!」


 ……酷い!彼を動物扱いするなんて!








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る