第21話 お役目

 数年後

「龍人、お告げが出された。申し訳ないが、今回は私ではだめなのだ」

「それは能力の事で?」

「いや、私では暴走する可能性があるからだ」

いつも冷静な龍造らしくない。

「僕にとって、初めてのお役目ですね」

「そうなる。おまえにもつらいお役目となるだろう。だが、サーシャと訓練を積んだおまえなら私より的確に処理出来るはずだ。すまんがおまえに任せる」

「それでは私も霊廟に入るのですね」

「そうだ。御神体に触れてもらわなくてはならない」

「判りました」

久しく無かったお告げが出た。

お告げを出すのは御神体である。

一族の御山とは古墳であった。そのため広大で、古墳を守るために周囲を山で囲まれた地形になっていた。

神社内にある神殿の地下に霊廟があった。

ちょうど御山の中腹、中心に位置する。

その霊廟の中に御神体がある。

龍人が霊廟に入るのは初めてのことである。

なぜ、限られた者しか入れないのか、中に入った龍人はすぐに理解できた。

御神体とは、ものではなく、霊体というか、意識というか、思念の塊のようなものだった。

はっ、と気がつき周りを見回したが、代々弔っているはずの亡骸が無い。

つい、数年前に運び入れたアンナ母さんの亡骸も無い。

物理的に、先祖代々納めてきた亡骸をすべて納めるだけのスペースは無いとは思っていたが、どういうことか。

祖父の龍元が話し出した。

「異様と思っているだろう。…御山が墳であるのは知っておるな」

「はい」

「御山自体が、墓なのだ。そこに御神体があるのはな、御神体が思念の集合体だからだ。それも他界した一族のな」

「いつからそうなったかはわしも知らぬが、わしが初めて弔いに入ったときはもう、そうなっておった。亡くなった者を御神体に差し出すと、塵のようになり、御神体に入っていった。肉体を離れた幽体が吸い込まれ、一体となると思えば良い。実際は肉体も塵となり吸い込まれるがな」

一族の肉体も吸い込んだ割に質量が小さすぎる。

にわかには信じがたいが、これまでの状況から、事実と思うしか無かった。

「我々が”御神体に触れる”と言う意味はな、御神体と交信をするという事じゃ」

「交信が出来るのですか?」

「いつもでは無い。お告げが出された時のみじゃ」

「御神体からその時の神主にお呼びがかかる。そして御神体にふれ、お告げを頂くのじゃ」

「今回のお告げとはどのようなものでしょう」

「触れればすべて判る。龍人、おまえにその資格があると認められたという事じゃ」

「御神体はこの世のすべてをご存じなのだ」

と龍造が言う。

「そして、一族が能力でなすべきことをお告げになる」

「そのお告げを履行することを守ると言のだ。告守とはそういうことだ」

「さあ、龍人。触れてみよ」

龍人が”触れる”と、すべきことが流れ込んでくる。

「これが今回のお告げですか。判りました。お役目、果たさせて頂きます」

「うむ、頼んだぞ」

お告げの内容に、少し心を曇らせる龍人。

しかし、これは父ではだめだという意味が判った。

と同時に、自分自身にも大変な試練となることも理解した

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