第6話 青い絆
年月は経過し、呼吸をするかのようにサーシャとタツトはテレパシーでコンタクトをとれるようになっていた。力のいろいろな使い方も出来るようになっていた。
これまでの経験が、二人の間に出来た子を一族史上最強の能力者に育てるのだが、それはまだ先のこと。
それからさらに一年。
サーシャは十五歳、タツトは十八歳になっていた。
(ねえ、今更だけど、タツトはどうして力の使い方を知っていたの?)
(僕の家はちょっと特殊で、ご先祖代々この力が生まれつき使えるんだ。だからサーシャが使えるようになるより、もっと小さな時から父さんやおじいさんから教わった)
(サーシャに教えながら、僕も父さんやおじいさんと訓練していたんだよ)
(私のことはお父様やおじい様はご存じなの?)
(初めて君と繋げる時、父さんに手伝ってもらった。おじいさんには話していないけど、多分知っている)
(そうなのね。早くタツトやタツトの家族と会いたいな)
(直接はすぐには難しいけど、前にサーシャの頭の中を通してサーシャの見ているものを見ることが出来ると話したよね。その使い方の延長でお互いの頭の中でなら会えるようになれるよ)
(教えて)
間髪を入れずサーシャは答えた。
訓練が続いた数日後。
(相手の目を通して相手の見ているものを見るのって、結構大変なのね。十歳から出来てたタツトってやっぱりすごい)
(訓練を始めたのが早かったし、あの時は父さんに手伝ってもらったから。それと僕の一族には絶対必要な使い方だから)
理由をサーシャは判っていた。タツトの心が曇ることも感じていた。
タツトと自分自信の気分転換もしたかったサーシャは、前から願っていたことを口に出した。
(ねえ、タツト。鏡の前に行ってくれない?あなたがどんな容姿か見たいの)
(ちょっと恥ずかしいな)
(でも、あなたは私を見たことあるでしょ?)
ちょっと間を開けて
(うん、まあ)
(何よ、今の。ひょっとしていつも私のことを見ていた?そんなの不公平だわ)
(いつもじゃ無いよ。ちゃんとプライバシーは守ったよ)
(今すぐ私にあなたを見せて)
(判ったよ、ちょっと待ってて。この後、練習があるから道着に着替えてからね)
冗談ぽく(裸でもいいわよ)とサーシャ。
(…お互いプライバシーは守ろうね)とタツト。
(私はタツトのすべてが知りたい)とサーシャ。
少し照れながら(もうすぐ鏡の前だよ。見てるかい)
鏡に映るタツトを見て言葉を失うサーシャ。
なぜか涙が溢れてくる。
(がっかりしたかい)
(違うの、その…。想像していたより素敵だなって)
(あ、ありがとう)かなり照れたタツトがそこに立っていた。
(き、君も素敵だよ)ぎこちない会話の後、少し沈黙が続く。
(あの、鏡に映る自分を見ながら話すの、ちょっと変な感じだからもういいかい)
(そ、そうね)
サーシャはタツトの優しく温かい心に感じていた好意が、異性に対する恋に変わっていたことを自覚していた。
タツトの容姿を見たとき、これまで感じていたそのままの優しさ、柔らかな暖かさがにじみ出ていることがとてもうれしかった。
ああ、私を見守り、導いてくれた人は想像通りの、いや、それ以上の人だった。
神様、そしてタツトをこんなに素敵な人に育ててくれたお母様に感謝します、ありがとう。
テレパシーである程度判っていたタツトの心と容姿が、サーシャの中で完全に一致した。
そのことは同時にお互いの繋がりをさらに強める。
(ねえ、これからもあなたの頭を通して見てもいい?)
(多分見ようとしなくても見えてしまうよ)
タツトはサーシャと、今まで以上にお互い深く繋がったことをうれしいと感じている自分を認識していた。
十数年前、タツトとサーシャがコンタクト出来たこと自体、奇跡的であり強い運命の様なものを感じていたからでもあった。
それからの二人は、日に日に繋がりが強くなっていくことをお互い認識していた。
それと同時に二人の力も正しく成長していった。
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