第35話 レアスキル

分からん。


不機嫌なセライアを連れ、のんびりと丘陵を散歩。


何時からだ?


昨日の夜、撮影会していた頃は、恥ずかしがってはいたが・・・機嫌が悪い訳では無かった。

その後だ。


そろそろ遅いから寝よう。

そう言った時も、一瞬びくりとしたものの・・・不機嫌では無かった。


で、俺が着替えて布団に入って・・・そのあたりで、あれ、とか不意に呟いて。


で、急激に部屋の温度が下がった感じがあった。


いや、その時点に理由を探すのは早計だ。

こういうのは、積み重ねで考えるべきだ。


つまり。


一通り撮影会が終わり、一段落ついたから・・・気付いたのだ。

自分がどれだけ恥ずかしい事をさせられていたか。

我に帰って、怒った。

つまりは、そういう事である。


さて・・・

どう機嫌をとったものか。


「なあ、セライア」


「・・・何でしょうか?」


うわ、見た事がないくらいにジト目。

癖になりそうだ。


「ここらで良いんじゃないかな、って思ってさ」


散歩のついでに、新しく取得したスキルを試す。


「・・・良いけど、本当に危険な奴は使っちゃだめだからね?」


セライアは、不機嫌さを引っ込めると、心配した様な面持ちになる。

スキルへの興味が勝ったか。


「大丈夫だよ。俺を信じて」


最初に試すのは、ジエンド。

あのジョークスキルだ。


「ほう、我が花嫁がこんな所に」


不意に、低い声が響く。

声のした方には・・・1体の若い魔族。

坊である。


「あんたが魔王か」


「不敬であるな。消えよ」


魔王が光を放ち、俺を貫こうとする。

展開してあったシールドに弾かれ、消える。


シールドの対象者は、俺とセライア。

1人にかけた場合と違って、2人にかけると効果時間が激減する。

例えば、城1つ護るシールドを張ると、更に激減する。

つくづく使えないスキルだ。


俺単独なら20分もつのに、2人だと18分、城くらい範囲を広げると16分くらいになってしまう。


セライアが目を見開き、後ずさる。

どこまで頼れるのかは知らんが、一応シールド張ってありますよ。


「我が力を弾くとは・・・貴様、なかなか良い道具を持っていたようだな」


「これでも、魔導具の多さには自信があってね」


なんかマジックアイテムのお陰だと思われたっぽいので、のっておく。


「私は、貴方の妻にはなりません。私は、此処にいる勇者様のものです」


セライアが叫ぶ。


「そなたが心に決めた相手、という訳か。構わぬ。我が子を産めばそれで良し、そなたの心など関係無いわ」


魔王が嗤う。

セライアと意見あうんじゃね?


「その勇者様とやらを、目の前で殺してやろう。それでお姫さまの気も変わろう」


ゴウッ


無数の光が俺を貫こうとし。

全て、シールドに当たって霧散する。


「グリフォン!」


召喚したグリフォンが、魔王の半身を吹き飛ばす。

・・・避けただと?!


「き・・・貴様あああ、何者だああああ?!」


魔王が、半身を再生させながら叫ぶ。


「だから勇者様だって」


セライアが半眼で呻く。

それは大山君な。


「貴様・・・後悔するぞ・・・?我の背後には、恐ろしい存在がついておるのだ。我を可愛がっておる・・・我に危害を加えるという事は、その方を敵に回すという事。その覚悟がなければ、我が花嫁を置いて去るが良い」


マゾー?


そう言えば、


「魔王。すまん、忘れてた。お前のじーさんから、手紙を預かってた」


「嘘をつくな?!我が祖父は、既に外道され、今は最早異世界よ!我に何かあればかけつけてくれるが・・・」


あれ、手紙受け取ってくれない。


「ねえ、マサシ。それ何て書いてあるの?」


ああ、読んでみようか。

受け取ってくれないし。


「えっと・・・我が一族の恥さらしめ。その命散らして、詫びとせよ。らしい」


おっと。


「なっ?!き、貴様、それをよこ・・・この字は・・・まさか・・・」


手紙をひったくった魔王が、わなわなと震える。


今だ。


まずはジャブを放ち・・・その次に、昨日得たスキルを色々試す・・・まずはジエンドか。

とりあえずジャブを。


「デス」


ぱた。


魔王が動かなくなる。


あ、効いた。


「・・・ねえ、マサシ。そのスキルは・・・?」


「対象の息の根を止めるスキルらしい。まさか魔王に効くとは」


「・・・マサシって、神スキルしか持ってないよね」


相変わらず褒めすぎである。

というか、これで終わりなのか?

レアスキル、1つも出てない気がするんだが・・・

というか、出現率低すぎだろ、レアスキル。

ガチャスキルのレベルが上がれば、確率上がるんだろうけど。


「・・・消化不良過ぎるんだが」


ドラゴンで燃やすか?

魔王の死骸。

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