第32話 良い身分

例によって、全員で記念撮影したあと、リュウの撮影会。


「ひょひょ、タナにセライアよ」


「ん?」


マゾーが話し掛けてくる。


「2人で記念撮影せんか?此処で撮影したカップルは、結ばれて幸せになる、そんなジンクスが有るんじゃ」


「ジンクス・・・それは興味深いね。いや、内容はともかく、伝説っぽいものは極めて興味深い。マサシ、協力してよ!」


おおう。

何故か喰い気味のセライア。


俺は苦笑すると、


「マゾー、それは嘘だ。此処は前任の神が創った禁足地。今日まで誰も立ち入った事が無い場所。つまり、そんなジンクスが発生する訳が無い。それは、デマだ」


「あの・・・マサシ、真偽はともかく、試してみても──」


「ひょひょひょ!流石じゃな、タナ。嘘ぴょーん、じゃあ!」


「ほらセライア。嘘だってさ。それとも、俺とツーショットの写真を撮りたいとか、そんな理由でも有るのか?」


俺は超撮りたい。


「あう・・・その・・・ほら、こんな綺麗な私と、マサシは是非一緒に写りたいんじゃ無いかなって・・・って言うか、もう気付いてるんじゃ無いのかなあ!」


図星である。

流石セライア、俺の気持ちに気付いているようだ。

これは・・・セライアの優しさ。

俺に対して恋愛感情は欠片も無いが、俺が望んでいるから、写真撮影に付き合ってくれる。


俺は、そこまで非道じゃない。

セライアは、俺を友人としてしか見ていない。

この気遣いも、友情から来るもの。

俺とは、スキル考察を話したり、性交渉したり・・・それだけの関係なのだ。


それに甘える訳にはいかない。

恋愛感情を持たないセライア、その心に、負担をかけてしまう。

友人として、それだけは絶対にNO!


「有難う、セライア」


俺は、セライアを抱きしめ。

セライアは、一瞬身体を強張らせるが、直ぐに弛緩し、俺に身体を委ね。

2人の体温が溶け合い、天に登る心地すらする。

耳元で、そっと囁く。


「写真は、撮らない」


「何で?!」


セライアが顔を上げ、叫ぶ。

いや、だから、無理をさせたくないんだって。


「いや、お二人さん、俺も2人の写真撮りたいし、さっさと祭壇の前に行ってくれ」


ロビットが半眼で言う。

おお、ロビットが撮りたいなら仕方がないな。


「行こうか、セライア」


「う、うん」


セライアが満面の笑顔で頷いた。

涙に濡れた瞳は、美しさを更に彩り──


俺は、ようやく気付いていた。


珍しい景色だから、気心が知れた面子だけで撮る、記念写真が欲しかったんだな。


--


「こっちだよ、マサシ!」


セライアが、駆けていく。

大山君達が必死に訓練する中、俺達はデートと洒落込む。

良い身分だろ?


うん、勿論嘘だ。

セライアに、俺と無目的に出掛けて嬉しい、と言う感情は無い。

本当は、伝説の遺跡を探すのに借り出されただけだ。


「でも、神代の兵器なんて、本当に有るのか?」


「伝承が正しければ、有る筈だよ。でも、見つからなければ──」


セライアが、俺をじっと見て、


「仕方がない。夕方まで、此処でのんびり寝転がってすごそうか」


セライアが、冗談を言う。


吹く風が、心地良い。

セライアが、空間収納から、可愛らしいランチボックスを出す。


くすり。


セライアが微笑む。


俺は、苦笑すると、


「探査」


ふむ・・・


数歩歩き、


「ここの直下、500メートル程掘れば、遺跡が有るな。早速帰って報告しようか」


「探索スキルが有るの?!」


セライアが慌てた様に言う。

分かっていた癖に。

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