第31話 一般人

「速過ぎるよ!!」


ようやく復活したセライアの、涙目の抗議。


「え、1時間以上かかったぞ?」


「時間じゃなくて、速度!」


仕方無いじゃん。

目的地が逃げてるんだから。


「たった3cちょいだぞ?」


リュウが小首を傾げ、


「それ、光の速度の3倍ですよね?!左側に数字つけて、何倍で表現して良い単位じゃ無いですよ?!」


セライアが叫ぶ。


俺は苦笑すると、


「分かるぞ、セライア。リュウ達って超人だから、一般人たる俺達とは常識が異なる事が有るよな。外道者あらざる俺達とは、な」


「キミも普通に飛んでたよね?!」


ただのスキルの効果だからなあ。


・・・


はっ?!


「セライア!閃いたぞ!」


「・・・?」


俺は、セライアの肩を掴むと、興奮気味に言う。


「ど・・・どうしたの・・・?」


「ああ。フライとシールドっていう、存在意義の分からないスキルなんだが」


「・・・うん、その神スキルが・・・?」


「組み合わせたら、魔王に通じるかも知れない。シールドを張って上空800kmに上昇、そこから10cの速度で自由落下、魔王に突っ込む・・・これで、少しはダメージ与えられるんじゃないか?」


「絶対に駄目ええええええええええ!」


セライアが叫ぶ。

何でだよ。


「おいおい、タナ。加速してる時点で自由落下じゃない。お嬢さんはそこを気にしているんだ」


ロビットの鋭い突っ込み。


「・・・しまった、すまない、セライア」


「そこじゃない?!」


え、違うの?


「ひょひょひょ、良いのう、良いのう。坊の最後は、この世界と共に、か。坊には勿体無い最後じゃわい」


大袈裟である。


「ナイス、ワールドエンドメテオ!」


リュウが格好良い名前をつけてくれた。


「絶対に駄目だからね?!」


セライアが涙目で俺を揺らす。

すげー可愛い。


「大丈夫、そもそも、俺は魔王と戦うつもりは無いしな」


のらりくらりと、この世界を満喫させて貰うさ。


「うん・・・マサシに魔王は近づけさせない・・・」


セライアは、力を込めてそう言った。


--


「うっわ・・・凄く綺麗」


セライアが、感嘆の声を漏らす。


空中庭園の中央、ルートクリスタルが安置されている場所。

湖の中央の祭壇の上、ルートクリスタルが輝き。

精霊が飛び交い、オーロラが舞い。


それに魅入るセライアは、凄く綺麗で、


「セライアの方が綺麗だよ」


「ふ、ふええ?!」


セライアが驚いて俺を見る。

おっと、声に出た。


「おいおい、タナ。愛しの君に急にそんな事を言われたら、嬢ちゃん、嬉しさと戸惑いで慌てちゃうだろ」


ロビットの的外れな突っ込み。

俺がセライアを好きなんであって、セライアは俺の遺伝子にしか興味がない。


「ち・・・違いますからね!マサシの事は恋愛感情は・・・その、無いんだから、全く無いんだからね!勘違いしないでよね!!」


セライアが、大声で、全く当たり前の事を言う。

知ってるってば。


「うん、知ってる」


「少しは勘違いしてよ??!」


セライアの無茶振り。

俺はそこまで間抜けじゃないぞ?

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