第30話 まさに外道

「それで、魔族と人間は共存共栄していたのだけど」


セライアは溜息をつくと、


「マゾー様が外道され、魔王を引退。魔王を継いだボウは、人間界への侵略を開始・・・」


当代の魔王はボウと言うのか。


「外道・・・まさに外道」


俺の呟きに、ロビットが、


「おいおい、タナ。勘違いしてねーか?外道ってのは、その世界の住人としての枠を超越する事・・・俺なら技術、ロビットは力、マゾーは魔力だな。外道者に至れば、世界を移動できる。世俗の職は辞する場合が多い」


「ああ、それで魔王を引退したのか」


「ひょひょひょ。世俗の者とは戦いが成り立たんからの」


まあ、セライアとマゾーの間に、圧倒的な差が有るのは分かる。


「魔王ボウがセライアを狙っているのも?」


「ひょひょ、自身で至るのを諦め、自分の子を外道させようとしとるようじゃな」


「クウウウウウウレイジイイ!何故自分のマッスルを信じない?!そんなの、絶対健全ではない!!」


リュウが叫ぶ。


「やめてやって欲しいのう。ヌシが殴れば、坊程度では、存在ごと消し飛んでしまうわい」


マゾーは俺に封書を渡すと、


「もし坊にあったら、これを渡してくれるかの?」


「ん、ああ」


受け取る。

でも、自分で渡しに行けば良いじゃん。


セライアは、まだ放心気味だ。


「そろそろ行こうか。今日は空中庭園、だっけ」


--


「なかなか近づけないな」


「うむ、もっととばすかの?」


「ミスタ、マゾー!ロビットが限界だ!」


「むむ・・・まあ、近づいてはおるし、このペースを保つかの」


スカイで飛行。

対象を俺の周囲、にして、セライアを巻き込み、一緒に飛んでいる。

風圧とか気圧は影響を消せる。

快適な空の旅。


「あわ・・・あわわ・・・」


セライアは、ずっと目を白黒。

いや、いい加減立ち直ろうぜ。

先代魔王に会って感動したのは分かるけど。


「地上800km上空・・・空中庭園と言うより、衛星じゃないのか?」


ロビットが悪態をつく。


「現地住民が近付かないようにしとるじゃろうなあ」


マゾーがしみじみと言う。


「はわ・・・ひうう・・・」


セライアが全力でしがみついてくる。

いや、飛ぶ対象にセライアを含めているので、しがみつかなくても大丈夫なんだが。


「お姫様は、高い所が苦手かい?」


ロビットが尋ねるが、セライアは目を白黒させたまま。


「ミスタタナにひっつくチャンスを満喫しているんだ。野暮な事は言うもんじゃないぞ」


リュウが、ふんす、と言う。


「ひううう・・・」


セライアが更に力を強める。

・・・これ演技かな?


まあ・・・俺には効果抜群だ。

何この可愛い状況。

ずっとこうしていたい。

ちなみに、スカイは重ねがけできるので、もう1時間近く飛んでいる。


それも、そろそろ終わりか。


100万km/sの空の旅。

逆方向から突入した方が早そうなのに、反対多数で否決された。

衝突のエネルギーが云々。

不便な。

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