第29話 共謀

「大丈夫だ、ばれない」


「でもやめよう」


取り付く島もない。

俺の技術を心配しているのだろうか。

30分有れば、上も下も替えられるんだがなあ?

相手も、自分が何を着けていたかなんて覚えてないだろうし、完璧だと思うのだが。


「時間停止の使い道なんて、それくらいしか・・・」


「いや、普通に強力無比の反則スキルだと思うよ」


せっかく考えた実用法は否定するのに、スキル自体は持ち上げる。

何故だ。


まあ、後はお風呂を覗いたり、とかか?


さて・・・街についた。

今日は、冒険者仲間と冒険行く約束をしている。

セライアも同行する事になった。


「待ち合わせは酒場だ。少し遅れ気味だし、急ごう」


「うん」


「まあ、気楽で良いよ。俺はいつも、戦闘では役に立たないから、ついていくだけだし」


「いや、マサシが戦闘で役に立たないって、有り得ないよね。最上級冒険者とのPTでも無双できる筈だけど」


買いかぶり過ぎである。


「・・・中堅冒険者との冒険でも、毎回、補助専門だよ」


世界は、キミが思っているより広いのだよ。


「さあ、ついた。酒場だ」


カララーン


ベルを鳴らし、酒場に入る。


「おお、ミスタタナ!プリティーなレィディを連れてるな!!」


「ほっほ、めんこいのう、めんこいのう、セライアちゃんかわゆいのう」


「タナ、お前の彼女か?連れて行くなら、守ってやれよ」


リュウ、マゾー、ロビットが野次を飛ばす。


「始めまして、セライアと言いま──今名前を呼びましたか?」


セライアが怪訝な顔をする。

確かにマゾーは知ってたみたいだな。


「ふぉふぉふぉ、メイガス、セライア。グロウリアの第一王女にして、人類最強の英雄。有名じゃからの、ワシでも知っとるわい」


マゾーが笑う。

いや、マゾー達の方が明らかに強いと思うぞ。


「あらら、私も有名だね」


セライアが、ポリポリと頬をかく。


「こっちは、俺が良くPTを組む、リュウ、マゾー、ロビット」


「・・・マゾー?」


セライアが怪訝な顔をする。

知っているのか?


「ひょひょ、嬢ちゃん、どうじゃ?ワシのもとで闇堕ちすれば、人の身を遥かに超えた力に導いてやるぞ。外道者にもなれよう」


マゾーが愉快そうに笑う。


セライアは、目を見開き、後退り、


「まさか・・・大老マゾー様・・・?」


「ひょひょひょひょ」


マゾーが更に笑う。

有名なの?


「マゾー、賢者か何かなのか?」


「違う!マゾー様は・・・先代魔王だった方だ」


え、魔王って倒されて変わるんじゃ無いのか?


「昔の話よ。今は坊が魔王の座についておる」


まさか、魔王が孫って、本当だったのか?


「なあ、先代魔王って、どういう事だ?」


セライアは、俺を見ると、


「・・・すまない。キミ達には、この世界の歴史を教えていなかったな。そうだな・・・創成期から語ろうか」


壮大。


「かつて、後のグロウリアの初代国王、勇者アルファ様は、仲間を連れ、魔王マゾー様に挑み──」


勝ったのか?


「マゾー様が提案した条件、手を組んだら世界の半分をやろう、を快諾し」


「絶対断ると思ったのにのう、冗談が通じぬ奴じゃ」


のんだのかよ。


「人類は幾つかの都市を明け渡し、魔族と人間は世界の半分ずつを治めるようになった」


人類の統率すげー。

良く、誰も文句言わなかったな。

約束を守る魔族もすげー。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る