第28話 創意工夫

ガガガッ


猿田の足下に氷の刃が撃ち込まれ、


「戯言をぬかすな。第一に、世界を救った際に、望むなら金品や地位は与えるが、王族との結婚を褒美としてはおらぬ」


セライアが、低い声で言う。

勝手に言ってただけか。

そもそも、元の世界に戻るなら、結婚も金品も地位もいらんよな。


「第二に、そなたの力では、10年かかっても魔王軍には抗せぬだろう」


そこなんだよな。

他クラスメート<サラ王女<大山君<猿田<香菜山<<<セライア<この前来た魔王軍(多分雑兵)<<<越えられない壁<<<リュウ達の様な中堅冒険者


魔王軍主力の力は分からないが、猿田達が魔王軍に勝つのは絶望的だとは思う。

何で俺達呼ばれたの?


セライアが意識の集中だけで放った氷の刃。

その威力が分からない訳では無いだろう。

猿田が沈黙する。


「それに、私はそこにいるマサシと婚約が決まっておる。不可能事を言うな」


「えええええ?!」


香菜山が悲鳴を上げる。

いや、俺も驚きだ。


セライアがちらっと俺を見る。

なるほど、俺とセライアが堂々と歩いている理由を偽装したのか。

俺はキミの嘘にドキドキだよ。


にっこり、と笑い返しておく。

セライアがぼっと赤くなる。

公衆の面前で有り得ない嘘を付き、恥ずかしくなったのだろう。


「そういう事だ。魔法の修練が必要であれば援助する。声をかけてくれ」


セライアが、そう告げた。


--


セライアは、所構わず、くっついて来るようになった。

まあ、今更隠すものは無いので、別に良いのだけど。


方針転換の理由・・・恐らく、俺のスキルを見て、子種がより欲しくなったのだろう。

ガチャ産スキルが遺伝するのかどうかは知らんが。

好きな娘に迫られる、それは幸せでは有るのだが、必要なのは俺の遺伝子だけだからな。

結婚するかも分からないし、将来的に関係性が破綻するのも確実だ。

なんなら、最初の子供にスキルが継承されない、その事実だけで用済みとなるだろう。


元の世界に戻る・・・これは、少し迷っている。

両親との関係性は悪くないと思うし、クラスメートとも──クラスメートはおいておいて、ネットには親友もいるしな。

うん。

俺は元の世界には親友がいる。

名前も顔も知らないけど、親友だ。


俺が、スキルの話をすると、セライアは興味深そうに聞いてくれる。

非常に心地良い。

セライアを引き留めるために、俺は情報を切り売りする。

単に所持スキルを説明するだけなら、一瞬で終わるので、応用性も混じえつつ。


「タイムって言うスキルがあってな」


「うん」


街道から外れた野原。

そこで休憩中、そう切り出す。

ぽかぽか陽気のお陰だろう。

微睡み、幸せそうに俺の腕に頭を乗せていたセライアが、頷く。


「時間停止をするスキルなんだが」


「え」


セライアが目を見開き、俺を見る。

いや、まだ驚く所じゃ無いぞ。


「本当に一瞬だけなんだけどな」


「・・・それでも凄いよ。無限大の可能性を秘めたスキルだと思う」


セライアが超よいしょする。

言い過ぎである。


「30秒だけだからな。結構微妙なスキル」


「いや、30秒も止めたら、無限大の可能性どころか、反則って感想すら生温いよね」


言い過ぎである。


「それの活用法を考えてみたんだ」


「うん」


セライアは、俺の話を本当に楽しそうに聞いてくれる。

反応も大きいし、凄く肯定してくれる。

・・・やっぱり、セライア好きだなって思う。


「時間を止めて、その間に知人の下着を脱がし、新しいのを着せ、時間停止を解除する」


「やめよう」


不意に、セライアが真顔になる。

何故。

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