第24話 世界を救う役には立ちません

「一般人よりは強いですが、中堅の冒険者よりは低い、といったところですか」


「召喚されて1ヶ月弱にしては、頑張っていると思うんですけどね」


一応、脅威のスピードで成長していると言われてる。

大山君達が比較対象としておかしいだけだ。

ちなみに、王女のレベルは200くらい、ステータスもMAGが2000オーバーと俺よりは高い。


「そうですね・・・下級兵士に混じって訓練をしても良いかもしれません」


ぶつぶつとサラ王女が呟き始めた。

おいおい。


「サラ王女・・・私は非才の身。冒険者として活動しつつ、情報を集める・・・そんな役割を続けたいのですが」


「いえ、訓練次第では、田中さんもきっと」


うーむ。


「王女様・・・実は、私はある人物より密命を受けていまして・・・王家とは独立して活動したいのです」


「ある人物、ですか?それは、聞き逃せませんね。怪しい組織だと困ります。全て話して下さい」


むぅ・・・


「実は・・・セライア、という人物の命令でして」


そっと、サラ王女様に耳打ちする。

さて、どこまで効果があるか。


がた・・・がた・・・がたがた・・・


サラ王女の顔が真っ青になり、歯を鳴らして震える。


ぺたり


座り込み、床には何かの液体が・・・

湯気が・・・

いや、あんた、リフィア王女が正体明かした時もそこまで驚いてなかったじゃん。

というか、怯えている・・・?


「・・・サラ王女・・・様・・・?」


サラ王女が、目から涙を流し、造った笑顔で、


「──です」


「え?」


「良いです。何も聞きません。田中さんは自由にして下さい」


?!


いや、顔が利くって言うか・・・

利き過ぎじゃね?


「おい、サラ?」


流石に訝しんだ王が、サラ王女の元へ駆け寄る。

サラ王女が、ロボットの様な顔で、王に耳打ちし・・・


へたり


王様が腰を抜かす。

おい。

セライア。

あんたいったい・・・何をした・・・?


「おい、田中、お前いったい?!」


猿田が俺の肩に手を置く。

そのまま力を入れたので、優しく手を掴むと、肩から手を外す。


「──何て力だ?!お前、まだステータス偽装してるだろ?!」


猿田が叫ぶ。


「猿田さん!」


サラ王女が叫ぶ。


「良いんです。田中さんは、ステータスが2桁の人物。とても、世界を救う役には立ちません。これまで通り、冒険者として情報を集めて頂きます」


必死の形相で、サラ王女が猿田に告げる。

失礼な。

STRは3桁あるぞ。


「そういう事だ。俺は非才の身、悪いが、お前達とは別行動をとらせて貰う」


うん。

困惑の表情のクラスメートもいれば、責務を果たせと言わんばかりの目のクラスメートもいて。

基本的に、好意的な目では無い。


適当に理由でっちあげて、不参加決め込んだ方が良かったかなあ・・・


--


「酷いよね。人を化け物か何かみたいに」


部屋に戻った。

セライアが、頬を膨らませ、抗議の声を上げる。


いや、むしろあんた、何やったんだ?


ちなみに、部屋にはいなかったが、使い魔で別室で見ていたらしい。


「あのサラ王女の濡れた下着、上手くやれば貰えたのかな」


「サラの下着が欲しいなら貰ってこようか?」


「・・・貰えるのか?」


それはそれでありかもしれない。

集めれば1人あたり78ptになるんだよね。


「多分、王様の下着も貰えると思うよ」


「いや、むしろお前、いったい何者・・・」


くすり


セライアが笑う。


多分、賢者なんだろうけど。

案外、建国当時からずっと生きている、とか、そんな存在なのかも知れない。

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