第23話 偽装看破

「ひゃ・・・100倍??!あり得ないよね、そんなスキル??!3分間限定で2倍なら見た事が有るけど!」


「いや、STRだけだぞ?他は10倍しか」


「しかって何?!」


え。


そっか・・・


「鹿って、この世界にいないのか?」


「10倍でも異常に高いって言ってるんだ!」


あ、そっち。


セライアはため息をつくと、


「マサシだから仕方無いかなって思ってしまうよ」


失礼な。


--


「城から招待?」


セライアが、訝しげに尋ねる。


「うん。何か知ってるか?」


「んー・・・サラの独断かなあ・・・あとは・・・明日は、キミの学友達のステータス測定が有るから、一緒に測るつもりかも知れないね」


「偽装しきれるかなあ」


「大丈夫だよ。ステータスクリスタルに、偽装看破の力なんて無い」


俺が吐露した不安を、洗髪の手を緩めずセライアが否定する。


「流すよ、目を瞑って」


「ん」


温かい湯が泡を洗い流し、


「次身体洗うけど、タオルとおっぱいどっちが良いの?」


「タオルで」


「うん、分かった」


むに


何で聞いたの?


「ねえ、マサシ」


「何?」


「もし、何か面倒事になったら、私の名前を出しなよ。セライアの密命で動いているって言えば、無茶は言われないと思う。これでも、王家には顔が聞くんだ」


「ん、有難う」


さて。

円周率でも思い浮かべて、気を紛らわすか。


--


「大山さん、流石の力ですね」


サラ王女が、嬉しそうに言う。


能力測定。

大山君達は、定期的にやっている。

俺は普段は対象外だったのだけど。

今日は呼ばれてしまった。


さっと鑑定を走らせる。


サラ王女は、そこまで強くはない。

大山君は、そこそこ強い。

悪者っぽい感じの、乱暴者の猿田は更に強い・・・なんというか、大山君の10倍くらい強い。

偽装しているから、大山君の方が強く見えているみたいだけど。


そして、香菜山は更に強い。

主にレベルのせい。


「次は、田中さん」


サラ王女が、俺の方を見て言う。


「リフィア様を助けたそうですよね。あの頃から成長したのでしょうか。貴方の力を見せて下さい」


それな。


「あれは、機転を利かせて状況を回避しただけです。私の能力自体は、凄く低いですよ?」


「一応、念の為です」


く・・・仕方がない・・・


***************************************


名前:

 田中雅司

レベル:

 0

職業:

 無職

ステータス:

 STR 1

 DEX 1

 AGI 1

 VIT 1

 MAG 1

 MEN 1

スキル:

 なし


***************************************


「え・・・偽装していませんか?」


サラ王女が目を見開く。

何故ばれた?!


「いえ、これが私の実力、ですよ」


「前より下がってますよね?!」


サラ王女の目に、疑惑の色が浮かぶ。

く・・・

前と同じステータスにすべきだったか・・・


「王女様、よろしければ俺がそいつの実力を調べましょうか?」


にやにや笑いながら、猿田が言う。

こいつ、わざと負けようとすると痛めつけてくる気だな。


「猿田君。田中君に手を出すなら、僕が相手するよ?」


大山君が言う。


猿田はいじめっ子、大山君はいつも僕を庇ってくれる。

まあ、猿田の方が今は強いんだけど。


「私も相手するわ」


香菜山が前に出る。

香菜山よりは猿田の方が弱い。


「け・・・勇者様に委員長は、優しいことで」


猿田が引き下がる。


「ともかく、田中君・・・偽装を解除して下さい」


「私の能力値を調べても仕方がないと思うのですが・・・」


「能力が低いからという事で、世界を救う任務から外したんです。最初から能力を偽っていたとなれば、話は別です」


いや、そもそも、無理矢理異世界から召喚して、強制的に任務を与える方が異常だよね。

みんなお行儀良く従っているけどさ。


「分かりました・・・でも、本当に低いですよ?」


***************************************


名前:

 田中雅司

レベル:

 101

職業:

 無職

ステータス:

 STR 100

 DEX 96

 AGI 98

 VIT 94

 MAG 88

 MEN 93

スキル:

 偽装 Lv.1


***************************************


「・・・本当に低いですね」


ほっとけよ。

レベルとステータスはそのまま。

驚きの成長率の低さ。

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