第20話 王家の全力支援

「いえいえ、あの方のお噂は、我が国にも届いておりますので」


わたわた、とエルフの王女様が手を振る。

え、俺知らないんだけど。

なんか、外国にも有名なくらいのエピソードがあるの?

召喚以来、一度も顔を見てないんだけど。

ああ・・・前線を支えているとかか。


「私は、エルゥ付きのメイドをやっています。以前、田中様にお助け頂いた事があって・・・無理を言って、同行させて貰ったんです」


エルゥが呼び捨てになっているけど良いのか?

あと、無理を言って同行というか、そもそも、招待を受諾したの、あんたが此処にくる為じゃないだろうな?


「そうだったのですね。田中さん、凄いですね、エルフ様と関係を持たれていたとは」


「関係?!そ、そんな訳ないじゃないですかっ?!いえ、それは勿論その・・・将来的には・・・」


王女様が真っ赤になって俯く。

おい、何をどう勘違いした。

あと、俺はエルフに手を出す気はないぞ。


「あら・・・田中さん、このエルフ様とその様な間柄なのでしょうか?」


王女──サラが小首を傾げる。


「いえ、私がエルフ様となんて・・・恐れ多い」


エルフの王女様が、ショックを受けた様に数歩下がる。

が、何か思いついたように、


「あのっ、サラ様、御願いです。私を・・・私を、ここで働かせて下さい!田中様に・・・私という存在を認めて欲しいんです!」


「あら・・・」


サラが目を見開く。


「いや、駄目に決まってるでしょ」


俺がつっこみを入れる。

あんた、エルフの国の王女だろうが。

此処に残って良い訳ないじゃん。

わざわざ身分偽装までして連れてきたのに・・・エルゥが泡吹くぞ。


「そうですね、それは良い考えかも知れません」


サラが微笑む。

え、何こいつ、何言ってるの。

やばい、こいつ、早くどうにかしないと。


俺の驚愕の顔を、サラが微笑みで受け流し、


「田中さん・・・駄目ですよ。身分が違うから、と選択肢に入れないのは、間違っていると思うんです。種族違いを乗り越えた愛・・・素晴らしいじゃないですか」


サラが片目を瞑ってウインク。


「いや・・・身分があまりにも・・・」


「相手が良いと言っているのです。それを理由に逃げるのは・・・違うと思いますよ」


サラは、目を瞑ると、


「それに・・・これが上手くいけば、人間種族にとっても大きな繋がりを得る事になります。グロウリア王家は、貴方と田中さんが上手く行くよう、全力を尽くす事を約束しますわ」


サラが、満面の笑みで言った。

エルフの王女様も、有り難うございますとぺこぺこ頭を下げる。


俺は蒼白になり・・・エルゥを探すため、探査を発動した。


--


「駄目に決まっているでしょう」


エルゥが蒼白になって、真顔で告げる。

こっそりエルゥに耳打ちすると、光速で飛んできた。


「しかし、エルゥ様・・・どうか、寛大な処置を」


「人間よ、そなた正気か??!」


エルゥが驚愕して叫ぶ。

気持ちは分かる。


「グロウリア王家は、この方と、田中さんを応援したいと考えています。王級の護りは盤石、どうかご安心下さい」


サラが頭を垂れ、告げる。


「王女様」


俺の呼びかけに、


「「なんでしょうか?」」


サラと、エルフの王女様が同時に反応。

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