第15話 そういった薬

ちなみに、セライアが俺に惚れているという事は無い。

人並みに性欲は有り、異世界の血筋にも興味は有るが、恋愛感情は持ち合わせていないらしい。

魔術、世界の真理、歴史、スキル・・・そういったものを研究する、それのみに興味があるとか。


「揉まない。とりあえず、風呂に入ってきたらどうだ?」


「うん。あ、一緒には」


「後で入る」


「だよね」


セライアが苦笑い。


「あんたのその態度こそ、相手を勘違いさせると思うがな」


「田中さんだけだよ。こんな態度を取るのは。私だって、誰だって良いって訳じゃ無いんだから」


セライアが半眼で言う。


「でも、俺に恋愛感情がある訳じゃないんだろ?」


「うん・・・私は昔から、人を愛せないんだ・・・ごめん、そういうの嫌かな?」


セライアが不安そうに言う。


「いや、今はその方が安心できるかな。セライアと一緒に居るのは心地良いよ」


俺も、将来的には人を愛して、結婚して、子供を育てて・・・そういうのに憧れは有る。

でも、せいぜい35を過ぎてからだ。

それまでは、気ままに生きていきたい。

だから、今は面倒事は避けたいのだ。


「俺もさ、関係性を持ってしまうと、やっぱり気も変わるから、さ。セライアがどうしても異世界の血筋が欲しいなら・・・世界が平和になって、元の世界に戻る前夜・・・とかどうかな?」


「ん、それは妥当な案だと思うね。1回で確実に・・・か・・・そういった薬の研究でもして見るかな」


セライアが少し考え込む。

・・・まあ、運を天に任せるしかないんじゃないかな。


--


「フライングスピア」


どしゃあああ


キラキラ光るゴーレムが倒れる。


「ミスタ、タナ!ナイススピア!」


親指を立て、豪傑、リュウが叫ぶ。

仲間を募っての、ダンジョン探索。

今は、ガラスの神殿を攻略中だ。

尚、出てくる敵のレベルは10万超え。

俺は基本、探査、鑑定、空間収納要員。

せっかく色々スキルが増えたので試させて貰っているが。

意外と通じるな。


「オリハルコンガーディアンをやすやすと貫くか。坊では辛そうじゃのう」


ひょひょひょ


しわがれた声で笑うのは、老人、マゾー。

魔王を孫と言い張る、愉快なおじいちゃん。


「おい、タナ。お宝はどっちだ?」


シルクハットにマント、蝶仮面。

怪しい格好のロビットが尋ねる。


探査、発動。


「右には、ボスか?左に金目の物があるな。直進方向から強い魔力反応」


「なら直進、かの」


ひょひょ


マゾーが笑う。

こいつら、ルートクリスタルとやらの傍で記念写真撮る事だけが目的なので、お宝やボスは基本放置。

通り道にあった時だけ入手する。

まあ、それでも膨大な利益になっているので、文句は無い。


ギギ・・・


無数のガーディアン。


「ハハハッ!ナイスバルク!!」


リュウが文字通り、千切っては投げ、千切っては投げ。


「おい、タナ。行き止まりか?」


「いや、正面の壁に何かあるな」


「へいへい」


ロビットがぺたぺたと壁を触り始め。


がこ


壁の一部がへこみ、壁の一部がせり上がり・・・

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