第9話 三女神

香菜山はため息をつくと、


千代田ちよださんと、金城かねしろさんよ」


まあ、予想通りか。


香菜山と仲が良い2人。

千代田は生徒会長、何処かの財閥の令嬢でもある。

金城は全国大会で優勝経験が有る、短距離の選手。

香菜山は、誰にでも親身になって世話をするから、ファンが多い。

学園カーストの最上位、3人合わせ、三女神と呼ばれている。


言わば、この下着は至高の財宝。

もし俺が本当にその手の趣味が有るなら、絶叫しただろう。

というか、その手の趣味が無くても目覚めてしまいそうだ。


受け取った下着は、2袋。

教えてもらった名前を書いておく。


「香菜山のは?」


「私のは、これ。昨日つけていたのと、さっき履き替えたところの奴で、2セット・・・」


差し出した紙袋を受け取る。


香菜山がじっと俺を見ると、


「あの・・・下着じゃなくて、中身には興味が無いの?」


「ああ、俺は下着にしか興味が無い。生物は不要な付属品だな」


胸を張って言う。

勿論嘘だ。

俺だって、年頃の健全な男子。

超興味は有る。


だが・・・考えても見て欲しい。

まだ高校生、たった18歳で人生が決まってしまうとか、耐えられない。


日本から来た同級生と関係を持てば、間違いなく責任を取らされる。

異世界の人と関係を持てば、元の世界に戻る事が許されず・・・


おっと、やるだけやって、責任取らないとかは無しだ。

俺は、そこまで非道にはなれない。

行為には責任が伴う。


例えば、お金を対価に何かサービスを受けるとかなら有りかも知れないが。

この異世界では病気も怖いし。

結局は、何もしない方が良い。


それに・・・下着にしか興味が無いと言っておいた方が、相手も安心するだろう。

メリットは大きい。

俺の名誉はズタズタだけど、些事だ。


「あの・・・マジックアイテムの件も、昨日の御礼も、まだまだだと思ってて・・・でも、これ以上、友人を巻き込むのは・・・だから、お願い。私の身体を・・・好きにして良いから」


香菜山は、美人だ

それも、超がつくくらい。

スタイルも良い。

二つ返事で頷きたくはなるが、我慢。


「俺が勝手にやった事だ。気にしないでくれ。今後も、手助けが必要なら言ってほしい。委員長の力になりたいんだ。理由は・・・みなまで言わせないで欲しいな」


香菜山達を強化して、世界を救って貰う必要がある。

みんなが色々働いている間に、俺は異世界やスキルを満喫するのだ。


「田中君・・・」


香菜山が、俯く。


「有難う、委員長。これは、大事に『使わせて』貰うよ」


そう告げると、香菜山の部屋を後にした。


--


宿に戻り、夕食を済ませ。

部屋で一息つくと、ご使用。


・・・少し、別の用途に使いたい誘惑は有るが、我慢。

効果が無くなっても困るし、戻れなくなりそうだ。


さて──


コン・・・コン・・・


ノックの音。

誰だ?

俺が泊まっている宿は、特に告げていないが。

隠している訳でもないので、誰かが来ても不思議ではない。


「誰だ?」


「怪しい者ではありません。貴方にとって、耳寄りな話が有ります」


怪しい。


警戒しつつも、開ける。

下着は隠してから。


そもそも、俺を害する気なら、夜や明け方を狙った方が良い。


入ってきたのは、フードを目深に被った人物。


ぱさり


部屋に入ると、外套を脱ぐ。


美人。

ゆったりとしたローブに身を包んでいる。

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