第6話 武闘派の神官

「・・・次に見かけたら、決して話し掛けず、すぐに知らせて下さい・・・何より、田中さんの身が心配です・・・」


「そうですね・・・そうします」


・・・これ、完全に疑われたな・・・

王宮来るのは最小限にしよう。


王女達と別れ・・・


「探査」


ポーン


青い音が、円状に広がるイメージ。

そして・・・香菜山は・・・物置?

そちらへと向かう。

3階、東塔へ、そのまま円状の階段を登り。

5階の見つけにくい部屋で、うずくまる香菜山に声をかける。


「委員長」


「ひゃっ、ごめんなさい、さぼっては・・・って、田中君?」


さぼってたの?

だからこんな分かりにくい物置にいたのか。


「どうして此処が・・・?」


「何だろう・・・委員長の事を考えていたら・・・自然と、足がこっちに向いていたんだ」


「私の・・・?」


「うん・・・と言うか、委員長の下着の事を」


本人に興味が有ると誤解されてもやりにくいので、誤魔化しておく。

うん、一気に室温が下がった。

香菜山は氷属性の魔法なんて使えない筈だけど。


「・・・此処まで来た理由は、私の身に着けている下着?」


「うん・・・駄目かな?」


香菜山は少し考えて、


「良いわ・・・でも、条件が有る。魔物を倒してレベルを上げたいの」


「良いよ、お安い御用さ」


この前約束したしね。

それに・・・クラスメート達が強くなるのは都合が良い。

クラスメート達にこの世界の危機を解決して貰う予定だからだ。


さて、狩場まで空間転移を──うそうそ。

そんなスキル無いし、そもそも、そんな事をしたら俺がユニークスキル持ちだとバレてしまう。


--


「ラージスパイダー、ラージラビットは、神聖魔法Lv3の、ジャスティスアローで良い・・・というか、高速詠唱、低燃費の良魔法だから、しばらくはそればかりで良いと思う」


「う・・・うん。詳しいわね?」


「知り合いに武闘派の神官がいるからね。色々教えて貰うんだ」


聖女は意外とレア職業だったが。

神官は普通の職業だ。

怪しまれる心配は無い。


本当は、聖女の秘跡、裁きの鎚の方が良いけど・・・


この辺りの雑魚にはオーバースペックの魔法。

さくさく魔物を倒し・・・そして、心配は杞憂で、普通にレベルも上がっている。

レベル5くらいから、徐々に上がらなくなり・・・


「そろそろ移動しようか。レベルの上がりも遅くなってきたし」


「そうね──え、何で田中君が私のレベルアップの速度を把握しているの?」


やべえ。

俺は、動揺を顔に出さず、


「勿論、僕には委員長のレベルを知る術は無い。狩場毎に適正レベルが定められているからね。それで、狩りをした時間と合わせ、美味しい狩場でなくなった、と予測がつくんだよ」


「・・・本当に、田中君は色々知っているのね」


「僕には、知識しか無いからね。無能者なりの足掻き、さ。できることは、何でもやってる。これでも・・・日本にいた頃は、ゲームが得意だったんだ」


ちょっと悔しげに、寂しげに・・・そんな空気を纏わせて発言する。


よし、なかなか決まったと思う。


「・・・田中君・・・」


香菜山がしっとりとした声音で言う。

効きすぎた?

誤魔化すか。

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