第4話 紫樹の森

「そうだ・・・はいてつけて・・・すぐに脱いで、またはいてつけて・・・5回繰り返してくれ」


「はい」


「俺は向こうをむいておく。終わったら言ってくれ」


「見ていても良いですよ・・・?」


エルフは恥ずかしがらないらしい。


一応、気を遣って岩陰でやっているのだが。


「貴方は命の恩人です・・・その・・・よろしければその・・・差し上げても・・・」


いや、そのつけ外しした下着は貰うからな?

最後にサイズ合う奴を幾つかあげても良いけど。


流石に、エルフから王宮にはばれないだろう。

そう思って、協力して貰う事にした。


エルフから受け取った下着を、空間収納に仕舞うと──


「その・・・さっきから、何処から出して、何処に仕舞っているのでしょうか?」


やはり、空間収納もレアスキルか。


「詮索はするな。それで・・・1人で里に戻れるのか?」


「えっと・・・それは・・・道は分かるのですが・・・また、オークが来たらと思うと・・・」


エルフが震えながら言う。

・・・仕方が無い。


「森の外周部まで連れて行けば、なんとかなるのか?」


「その・・・できれば、迷いの領域の入り口まで・・・御願いします」


く。


「分かった」


乗りかかった船だ。

というか、また浚われたら後味が悪い。


エルフの案内で、迷いの森まで。

紫樹の森・・・魔女がいるとか言われている所か。

途中、大きめのかまきりと芋虫が出たが、フライングソードで処分。

流石に最近は命中できる様になった。


あ、レア薬草みっけ。


「あ、月光草ですね・・・良く見つけましたね」


「薬草採取は慣れているんだ」


「・・・一応、エルフでも見分けはかなり難しいのですが・・・」


鑑定はエルフの間でもレアスキル、と。

これは、クラスメート達にも伏せておいた方が良いのかも知れない。


森の中を進むと・・・エルフが数名、警戒した様子で向かってくる。


「・・・姫様?!」


「あ、エルゥ!」


あんた姫かよ。

オークに捕まるなよ。


「大丈夫ですか・・・?!オークロードに連れ去られたと聞いて・・・本当に・・・心配しました・・・」


「大丈夫です、この方が助けてくれました」


やべえ。

たまたまオークロードいなかったから良かったけど、いたらやばかった。

あの辺、近付かない方が良いな・・・


「・・・人間・・・姫を助けてくれた事は感謝する・・・だが・・・此処には近付かないで欲しい」


「えっ?!」


エルゥとやらに頷くより先に、姫さんが驚きの声を上げる。


「・・・エルフは、人間とは相容れない存在。此処は、人間にも秘匿されている・・・そうですね?なら・・・本来、俺が此処の存在を知るのは禁忌・・・俺は、此処の存在を忘れる事にしますよ」


俺の言葉に、


「・・・そんな・・・勇者様・・・」


勇者じゃねえよ。

勇者は大山君だ。


ちなみに、ぼろを出さないように、少しずつ顔色を伺いながら喋っている。

人間にも秘匿されている・・・の部分で顔色を伺い、怪訝な色が浮かんだら、訳ではないですが・・・と続けるのだ。


「では、日も暮れかけていますので・・・失礼しますね」


オークロードが戻ってこない内に逃げなければ。

このエルフ達にも下着をつけてもらえば、11連も可能だが。

それは流石にリスクが大きい。


・・・口止めしておくの忘れたが・・・まあ良いか。


「あの・・・勇者様・・・また・・・会えますか・・・?」


「また御身を危険に晒すのですか?それは、エルゥさん達の心を痛めてまで・・・為す行為ですか?御自身の立場を、正しく認識なさって下さい」


姫さんが、顔を俯ける。


「それでは・・・失礼します」


頭を下げると、猛ダッシュで街へと逃げ帰った。

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