29 冬の足音
衣替えのタイミングが難しいんだよ、と言いながら、ケイさんは今日も半袖のシャツの上からもこもこのコートを着込んでいる。
長すぎる夏が終わったと思ったらいきなり寒くなり、かと思えばまた春のような日差しが降り注いだり――。いわゆる『異常気象』が恒常化してしまって、何が正常で何が異常なのか、分からなくなってきたけれど。
「あー、ココアが美味しい」
朝晩の冷え込みに、温かい飲み物が欠かせなくなってきて、とうとう電気ケトルの導入を決めた。
「明日は晴れの予報なので、いい加減にタオルケット類を洗いますよ」
さすがに冬用の掛け布団でないと安眠できなくなってきて、夏用の寝具をしまい始めた。
「ねえめぐみクン、そろそろクリスマスツリーを……」
「まだ早すぎます!」
冬の足音は静かに、そして着実に――すぐそこまで迫っている。
「今年のクリスマスは鶏の丸焼きが食べたいなあ~」
「だからまだ早すぎ――鶏の丸焼きぃ!? 家のオーブンレンジで焼けるわけないでしょうが!」
「ところがどっこい、小ぶりのヤツなら、家庭でも割と簡単に作れちゃうんだって! だからさー、一度やってみようよ」
「むむむ……それなら、まずはスーパーで丸鶏の値段を見てから話し合いましょう」
「やったー!」
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