21 ボジョレ・ヌーボー

『ボジョレ・ヌーボー予約受付中!』

 メールチェックのため星間ネットに繋いだ途端、そんな広告が飛び出してきた。

「もう新酒の時期だってさ」

『今年ハ『百年ニ一度ノ出来』ダトヨ!』

 ケッ、と馬鹿にしたような鳴き声まで上げて、サポートAIのキングは金属製の羽をばたつかせる。

『去年ハ『今世紀最高峰ノ味ワイ』ダッタゼ』

「キャッチコピーなんてそんなもんだろ。酒が飲めるだけで人間は浮かれちまうのさ」

 地球が氷期に突入してすでに三百年以上。かつてフランスと呼ばれていた地方を含め、北半球のほとんどは分厚い氷と雪に閉ざされてしまっている。つまりは葡萄が採れるはずもなく、新酒が造れるわけもない。

 ところがどっこい、人間というのは実に逞しいものだ。

 とある惑星開拓者が、発見した星に先祖の暮らした土地の名前をつけた。そこはたまたま温暖な気候で葡萄がよく育ち、やがてワインの一大生産地となる。

 惑星の名は――言わぬが花か。


「一瓶予約、と」

『買ウノカヨ』

「こういうのはほら、縁起物ってヤツだよ。『旬』を味わうために買うのさ」

『人間ノ考エルコトハ、ヨク分カラネエナ』

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